球数の上限設定は故障予防の通過点 “肩・肘の権威”とポニーが目指すゴールとは

ポニーリーグ肩肘検診の様子【写真:川村虎大】
ポニーリーグ肩肘検診の様子【写真:川村虎大】

指導者の中には考えや方針を変える“恐怖感”があるという

「保護者から『なんで、うちの子を交代させたのか』と問われても、指導者は球数制限を理由にできます。選手交代も活発になって、試合に出場する選手が増えます」

 古島医師の考え方を理解しながらも、指導者が方針を変える難しさを説明するのは、協会の事務総長・那須勇元氏だ。千葉県で活動する市原ポニーの総監督も務める那須氏は「ずっとやってきた指導を変えるのは怖いんです」と説明。過去に、古島医師から走り込みをやめるよう提案されたことを明かす。

「昔からやってきたので、怖さはありました」。足腰強化を目的に続けてきた長距離走を練習メニューから外し、代わりに短距離走を取り入れた。すると、投手陣の球速はそろってアップし、中には最速が120キロから136キロに上がった選手もいた。那須氏は、従来の考え方や方針を変えるには、指導者や保護者に客観的な数字や効果を示す必要性を感じている。

 中学生世代では「投球制限統一ガイドライン」が昨年改訂され、ポニーリーグ以外でも球数制限が導入された。肩・肘の故障予防は前進している。ただ、ポニーリーグが目指すのは、球数の上限設定ではなく、投げ過ぎにより未来を奪われる選手をなくすこと。ゴールは、まだ先にある。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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