自らの体を“実験台”に 引退後に最速154キロをマークした元早実エースの投球論
肘を前に出さない投球フォームを推奨、現役引退後に軟式で155キロ計測
実際、内田さんは現役を引退してから、自己最速を更新している。速い球を投げる方法を追求した結果、硬式で154キロ、軟式で155キロを計測した。選手時代のピークより5キロ近く球速が上った理由の1つは、「肘を前に出して投げる」という球界の常識を疑ったことだった。球に力を伝えるには、投球する際に肘を胸のラインより前に出さない方が良いと感じていた。今では千賀の他にもオリックスの山本由伸投手ら、日本球界を代表する選手も実践しているが、内田さんは早い段階から同じ感覚を持っていた。
「元々言われていることが間違っているというわけではなく、もっと良くなる可能性があります。改善すると思ってやってみて、やっぱり前のやり方に戻そうというケースもあると思います。ただ、今のやり方で伸びしろを感じなくなった時に、知識や技術を掛け合わせて試すことで、可能性が広がると思います」
少年野球の子どもたちにも、自分が納得して今の段階でベストだと判断した技術やトレーニング方法のみを伝えている。また、子どもたちはプロと違って知識や経験が少ないため、実演して、まねをさせる教え方が多いという。「自分で試していないことを指導するのは好きではありません。言葉で理解してもらいたい部分もあるので全てではありませんが、やってみせるのが一番分かりやすいと思っています」。
肘を前に出さないフォームの方が球のスピードは速くなり、体への負担も少ないと考える内田さんは実際に投球して、子どもたちに体の使い方を理解してもらう。そして「肘を前に出すな」と指摘するのではなく、結果的に肘が前に出なくなる体の動きを習得できるように指導する。
「肘を前に出すなと言われて続けて1時間で完成させた投球フォームは、1週間後に忘れている可能性があるそうです。それに対して、自然と肘が前に出ない投げ方になるような練習をすると、体が長い期間覚えています」。技術もトレーニングも、今ベストな方法が最終的なゴールとは限らない。内田さんは立ち止まらず、常に先を見据えている。
(間淳 / Jun Aida)
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