イップスになる選手の共通点 無縁の選手は「予想以上に大雑把」…経験者が語る対処法

制球に自信がある元プロ野球選手から学んだ「アバウトな自信」

 指導者になってから制球やスローイングに自信のある元プロ野球選手らと話をする中で、イップスとは無縁の選手は予想以上に大雑把な考え方をしていると知った。そして、人の言動に左右されない確かな自信を持っていた。

「こうやって体を使えば、大体こんな結果になるとアバウトな考え方をしていました。完璧なプレーを求めるほど、イップスの沼にはまりやすいと感じました」

 こうした経験から、子どもたちへの指導方法を見直した。投手に対しては、コースか高さのどちらかを意識して投球練習をするようにアドバイスし、野手には相手がグラブを構えたところをピンポイントに狙うのではなく、胸元付近の捕りやすいところに送球するよう伝えている。

 選手にイップスの兆候がみられた際は、動作を分解して指導する。相手と正対した状態で上半身だけを使い、腕の振り方によって投げた球がどんな軌道を描いて、どこに向かうのかを確認するキャッチボール。球を持たずに正しい方向へ送球する下半身の動きのみの反復練習。どの動作に課題があるかを明確にすると同時に、それぞれの動きで80点を目指すようにすることで、完璧を捨てて自信を積み重ねる指導を心掛けた。

 選手たちは「大体これくらいで大丈夫」と自信を持つと、投球や送球への怖さがなくなっていく。中には、イップスを克服して強豪高校に進学し、1年生の夏からベンチ入りした選手もいるという。

 イップスは誰でも陥る可能性はあるが、未然に防げたり、軽いうちにすぐに治せたりする。100%の理想を追い求めない、「アバウトな自信」が対処法になるケースもある。

(Full-Count編集部)

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