場面や打球で選択が変わるカットプレー 元燕の名手が重視したのは状況確認と状況判断

点差で変わるカットプレー、求められる状況判断

 例えば、9回裏1死一塁の守備で打球が右中間を抜けたとする。2点勝っているケースで最優先するのは、打者走者の三塁進塁を阻止すること。一塁走者がホームインしてもリードの状況を保てるため、いかに同点にされないかを考える。しかし、同点のケースであれば、一塁走者のホームインを防ぐカットラインをつくる。点差によって、カットプレーは変わる。

「スタンドの歓声などで捕手からの指示の声は聞こえにくいため、近くにいる内野手で声を掛け合います。打球が右中間を抜けた場合、基本的には二塁手が1人目のカットに入り、その後ろに遊撃手が入ります。ホームが間に合わないと判断すれば、遊撃手が『サード、サード!』と大きな声で送球する場所を指示します」

 この状況判断が、走者をアウトにできるか、進塁を阻止できるかのポイントになる。打球と走者の状況から、ベストな方法を見極める。

「例えば左中間にライナーが飛んで外野手が捕れないと確信した時点で、外野手との距離を詰めて行きながら何度も何度も内野側に目を向けていきます。カットラインを作って、外野手に『ここに投げてこい!』と伝えるのは最後で良いと思います。ギリギリまで走者の状況を見極めることが、最善の判断につながっていきます」

 カットプレーの判断は経験と日頃の意識が重要になる。少年野球の時から走者を目で追い、優先するプレーを考える習慣を身に付ければ、勝敗を決める場面で最高のカットプレーができる。

(大利実 / Minoru Ohtoshi)

○著者プロフィール
大利実(おおとし・みのる)1977年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て、フリーライターに。中学・高校野球を中心にしたアマチュア野球の取材が主。著書に『高校野球継投論』(竹書房)、企画・構成に『コントロールの極意』(吉見一起著/竹書房)、『導く力-自走する集団作り-』(高松商・長尾健司著/竹書房)など。

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