疲れていると怪我の確率は約8倍に 1日2試合以上の投球、連日の投球は避けるべき?

疲労を感じている時の投球は怪我の確率は約8倍に【写真:荒川祐史】
疲労を感じている時の投球は怪我の確率は約8倍に【写真:荒川祐史】

どのようなことが子どもたちの投球障害へつながるのか

 肘内側側副靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の権威である慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師は、野球上達への“近道”は「怪我をしないこと」だと語ります。練習での投球数を入力することで肩や肘の故障リスクが自動的に算出されるアプリ「スポメド」を監修するなど、育成年代の障害予防に力を注ぎ続けてきました。

 では、成長期の選手たちが故障をせず、さらに球速や飛距離を上げていくために重要なのは、いったいどのようなことなのでしょうか。古島医師は休養の重要性を訴える一方で、体を鍛えたり、柔軟性を高めたりすることも必要だと話します。この連載では、慶友整形外科病院リハビリテーション科の理学療法士たちが実際の研究に基づいたデータも交えながら、怪我をしない体作りのコツを紹介していきます。今回の担当は綿貫大佑さんと貝沼雄太さん。テーマは「投球障害に影響する危険因子について」です。

◇◇◇◇◇◇◇

 怪我をせず、たくさん練習をして上達してほしい――。少年野球の指導者、保護者の方々はみんな同じ思いを持って子どもたちに指導をされていると思います。休日も返上して指導にあたる方々には頭が下がる思いです。しかし、そんな熱意を持って指導をされていても怪我につながるリスクを知らずに指導すれば、まだ心も身体も未熟で素直な子どもたちは無理をしてすぐに怪我をしてしまいます。

 今回紹介するのは「The American Journal Sports Medicine」という雑誌で紹介されている投球障害のリスクについての研究です(※1)。9歳から18歳までの投手754人を対象に全国調査を行い、リスクを生じやすい活動を特定して「アメリカスポーツ医学研究所(ASMI)」による勧告と比較した報告です。

 ASMIによる勧告とは、少年野球の投手が避けるべきリスクを伴う活動についてのアドバイスをまとめたものです。その内容には、(1)少なくとも年間4か月間は野球の試合には出ない(2)投球回数と休養日の制限を守る(3)シーズンが重複する複数のチームでの投球を避ける(4)捕手と投手の両方をやらない(5)野球以外に他のスポーツをする(6)肩や肘の痛みを訴える場合は投球を中止する、などが含まれています。

 米国ではこのようなルールが運用されていますが、実際の現場における活動がASMIの勧告と異なるのか、またルールに従う(または従わない)ことが腕の問題やケガのリスクに影響するかについてはほとんどデータが出ていませんでした。そのため実態調査を行ったのが今回の研究です。

疲れや違和感を我慢して投げることが怪我に“直結”

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY