徹底した「見逃し練習」で全国V 東京・上一色中が“143キロ右腕”苦にしなかったワケ

見逃し練習から1週間…選手から「打てそうな気がします」

 選手たちは、いつ足を上げるのか、どうやってタイミングを取るのか迷っていたが、日を重ねるにつれ、目が慣れてきた。数人の選手から、こんな言葉が漏れる。

「先生、打てるかもしれません。打てそうな気がします」

 実際にスイングさせると、芯ではとらえられないものの、バットに当てることはできた。初戦の1週間前からは、マシン1台は変わらず見逃す練習、もう1台は打ち返す練習に使った。次第に感覚をつかみ、鋭い当たりを飛ばす選手が増えてくる。試合の数日前には、レギュラーのうち5、6人は安打性の打球を放つようになっていた。西尾監督は言う。

「森投手を攻略する練習を始めてから、選手たちに火がついたのが分かりました。日が経つにつれて選手たちの反応が良くなっていたので、何とかなるかもしれないと感じました」

 森の対策を対戦が決まった直後ではなく、対戦の2週間前から始めたことにも意図があった。指揮官は「早くからやり過ぎると、投球を呼び込む“間”を作れなかったり、変化球に対応できなくなったりします。2週間と期間を決めて、それ以外の時は緩い球を打つ練習を普段通りに続けていました」と説明した。

 最速143キロ投手の攻略に不安なく臨んだ一戦。初回は無得点だったが、ライナー性の当たりが続き、西尾監督も選手たちも自信を深めていた。そして3回、4番・福原が左翼スタンドに同点ソロを叩き込む。5、6回には三塁打でチャンスをつくって、2イニングで3点を奪った。投手は継投で相手打線を2点に抑え、上一色中は4-2で聖心ウルスラ学園聡明中に勝利した。

窮地を救った控え選手…チーム力の底上げも優勝の要因

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