「僕は努力していない」 松井秀喜氏が子どもたちに伝えた“目標に向かうこと”の本質

内角球の打ち方は? 打席で緊張しない方法は?

 次第に質疑応答は技術的、実践的になっていった。内角のさばき方について問われると「体が大きくなってくると(インコースが)窮屈になるよね。なので私(のような左打者)の場合だったら、おへその前に“キュッ”と左の肘を前に入れてあげる。そうすると詰まらないよ」と体を使って説明した。

「緊張しないで打席に立つ方法は?」との質問には「緊張はするでしょ?」と優しく問いかけ、どんな公式戦でも練習試合でも緊張する場面はあることを前提とし、「普段の練習から同じ気持ち、同じ準備をすることが大切。緊張するシチュエーション(場面)でいつも意識していることに集中をする。いつもと同じ自分を出すために、意識していることをどの場面でもやっていこう」と語りかけた。

 質問コーナーを終えると、最後は子どもたちと記念撮影。サインのプレゼントもあった。一人一人の目を見て、時折声も掛けながら、時間を楽しんでいた。「この中からプロ野球選手が出てくるかもしれない。みんなの活躍を楽しみにしているよ」と告げて、イベントは終了した。練習を重ねていけば、石川からまたプロ野球、そして世界へ飛び立つ選手が出るかもしれない。

 松井さんは努力を積み重ねて、プロで成功を収めた印象が強い。だが本人はその考えを否定する。「僕は努力をしていないと思います。努力をしてきたという感覚はないですね」と言い切る。

「まず、自分がどんな努力をしたかはわからないです。バットを振ること=努力だとしたら、それは努力かもしれないですけどね。努力したかわからないですけど、だんだん打球が遠くに飛ぶようになったというのは、子どもの時に嬉しかったことですね。でも、それが何が原因だったのかはわかりません。ただ体が成長して、大きくなっただけ。自分がどんな努力をしたのか? というのは、記憶にないですね」

 努力は自分の判断で決めるものではない。第三者が判断する“努力ができる人”の共通点として挙げられることが多いのは、特別なことをしている感覚がないこと。子どもの頃から甲子園に出るという目標に向かってバットを振り、プロ入り後は活躍すること、メジャーで戦うことを夢に全身全霊で戦ってきた。松井さんの活動は、野球の技術を伸ばすことが目的ではなく、夢や目標を持つ手助けになることだと見ていて感じた。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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