高校教師を辞め野球指導者へ 米国で覆された日本の常識、習得した独特な練習法
日本と違う米国の練習に驚き 個人の技術を伸ばす大切さ実感
米国と日本は練習の仕方が全く異なった。米国の少年野球では、全体練習は週に1回、1時間程度。ほとんどの時間を個人の技術を伸ばす時間に充てる。ボールの投げ方や捕り方に始まり、理想的なスイング軌道や走り方などを一人一人に丁寧に教える。全体練習は二塁牽制の動きの確認など、1人では練習できない連係プレーが大半を占めた。菊池さんは、日本との違いに衝撃を受けた。
「技術的な理論や指導法も勉強になりましたが、一番は練習の仕方と練習に対する考え方を学びました。米国の指導者は個々の選手に声をかけて、それぞれの動きをチェックする時間を大事にしていました」
菊池さんは現役時代、全員でランニングや打撃練習、ノックをすることに疑問を持たなかった。練習の目的を考えるよりも、とにかく数をこなして技術を伸ばそうとしていた。
だが、まずは個々のスキルを上げなければ、チーム練習の効果は薄いと知った。同時に、子どもの頃からチームプレーに重点を置き過ぎると、選手から野球の楽しさを奪う可能性があると感じた。
「個人の能力が一定のレベルに達していなければ、チームプレーはできません。上手く捕球や送球ができない選手が全体練習のノックに入っても、プレーに参加できないわけです。そうすると、うまい選手ばかりが打球の来るポジションについて、そうではない選手は野球がつまらないと感じてしまいます」