破れた思い出のグラブも「生まれ変わる」 修理専門店が目指す野球人口増加

「ただ直すだけではなく、思いを形にする修理」

 石川さんは、野球に不可欠なグラブが修理できると認知されれば、わずかながらも野球を始めるハードルは下がると考えている。原材料費の高騰や円安で今後グラブの価格は上昇すると予想され、修理の需要や役割は大きくなるだろう。

 石川さんのところに持ち込まれるグラブには、それぞれ歴史がある。その歴史を尊重し、思い出をよみがえらせるように手を入れていく。中には、自分が使っていたグラブを息子に引き継ぐために修理を依頼する父親もいる。

 製造技術が発達していなかった当時は上質な革しかグラブにできなかったため、修理すれば今でも十分に使えるという。破れやほつれを修復し、汗で劣化しやすい手を入れる部分を新しくすれば、父親の思い出を残しながら、息子の好みに合った新しいグラブへと生まれ変わる。

 天国に旅立った友人との思い出を胸に、石川さんのもとを訪れる人もいる。形見として譲り受けたグラブを部屋に飾るため、きれいにしたいという依頼。石川さんは、お客の話を聞き、グラブに込められた思いを共有する。

「ただ、使えるように直すのではなく、思いを形にできたらいいなと考えています。誰かの役に立てていると感じたり、修理後に喜んでもらえたりするやりがいが仕事を続けている理由です」

グラブの壊れ方でプレーをイメージ 依頼は断らず月に70個を修理

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