破れた思い出のグラブも「生まれ変わる」 修理専門店が目指す野球人口増加
グラブの壊れ方でプレーをイメージ 依頼は断らず月に70個を修理
新品のグラブとは違い、修理するグラブには歴史が刻まれている。石川さんはグラブの形、破損箇所や擦れ具合を見れば、持ち主がどんなプレーをするのかイメージできるという。革が破れたといっても、直し方は変わってくる。個々の使い方に合わせた修理を心掛けている。
思いを形にする仕事ができるのは、技術と経験があってこそ。石川さんはスポーツ用品店に勤務した期間を含めて15年間、グラブ修理を続けている。北海道から沖縄まで全国各地から依頼があり、現在は月に平均70個のグラブを直している。
革を縫い合わせるミシンの扱いは難しい。また、決まった形で裁断された新品のグラブのように、修理は同じ作業の繰り返しとはいかない。基本を覚えてからは、経験を積んで知識や技術を高めていくしかない。経験が財産になるため、石川さんは依頼を断らないことをポリシーにしている。
「グラブを使う人が違えば、壊れ方も変わります。やったことがない修理の依頼が来た時は、経験がないと正直に伝えてから、思い付く方法を説明しています。ご了承いただいた上で修理させていただければ、次に似たような依頼が来た時に対応できますから」
グラブは修理で生まれ変わる。破損したところを直して寿命を延ばすだけではなく、石川さんは思い出をよみがえらせて新たな命を吹き込んでいる。
(間淳 / Jun Aida)