「お前は辞めろ、向いてない」 怒声が元凶の少年野球の“移籍問題”、指導者が犯す罪
あなたが見ている世界が全てではない、と伝えたい
あなたの見ている世界が全てではないですよ。他のチームを見て初めて気付くことが多くあります。「今までのチームって何だったのだろう」と気付かされることがあります。今、少年野球を変えようと頑張っている指導者さんもたくさんいらっしゃいます。いいチームを作ろうと思っていらっしゃいますから。
同時に難しいのは、人によって、価値観や野球の楽しみが違うことです。練習時間は3時間の方がいい、とか、1日中、ガッツリと練習をやる方がいいとか、勝利至上主義とか、少年野球は勝ち負けはどうでもいいのだというふうに“いいチーム”の考え方が一つではないことです。いい悪いではなく、方針の違いがあり、親子が何を選んでいくかの時代になっています。
それを運営側からするとうちのチームはこういうチームですということを入団前にオープンにして説明しなければいけない義務が僕はあると思っています。最上学年を優先して試合に出しますとか、勝ちを優先するので学年は関係なく試合に出しますとかそういう方針や方向性を入団前にきちんと説明することがトラブルをなくすことにもつながります。ホームページやSNSに嘘偽りないチームの方針や現状を説明してあることも大切です。
移籍の問題点として。難しいのは地方に行けば行くほど移籍が困難で移籍できない形です。学童の縛りで移籍ができないケースです。お互いの監督さんも連盟さんも移籍を容認したのに、小学校の校長先生がダメだというケースがありました。こうなると誰のための少年野球なのか首をかしげます。
辞めたチームの監督さんが他のチームに移籍できないよう近隣の監督さんにその子を受け入れないようにしているケースもあります。結局、移籍がどこにもできずに野球を辞めてしまう子もいます。こういうことが野球人口を減らしている一つでもあるのです。組織や連盟さんに根底から見直していただきたい部分です。
野球人口の減少によって1つの小学校に1つのチームということが崩壊しかけている今、学童の縛りはもう役目を終えたのかもしれません。横浜市だったらどこのチームに入団していい、移籍をしていいという時代にもう来ていると思います。
しかし、そうなると当然のことながら問題があるチームに人は入ってこなくなります。残念ながら廃部になってしまうチームも出てくるでしょう。自分のチームに魅力があったら……自分の指導に自信があったら、人は集まります。環境や少子化の問題で人が集まらないのは仕方がありませんが、問題があって人が集まらないチームには残念ですが需要がないということです。魅力のあるチームであれば「集めるチーム」ではなく「集まるチーム」になってくるはずです。
○プロフィール
年中夢球(ねんじゅうむきゅう)本名・本間一平。学童野球・クラブチームで指導暦20年。学童野球とリトルリーグで指導者を計20年間務め、プロ野球選手も育てた。多い時には80人のメンバーがチームに所属し、神奈川県大会で優勝した経験もある。DeNA左腕・石川達也投手は教え子の1人。現在は講演や書籍を通じて、指導者や保護者に経験や考えを伝えている。
【年中夢球さんが保護者に送る動画はこちら】
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(Full-Count編集部)