野球経験者が社会で重宝されたのは今や昔…“礼儀や忍耐”だけでは欲されぬ現代

多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:伊藤賢汰】
多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:伊藤賢汰】

習い事で不動の人気 保護者がスイミングを選ぶ理由にヒント

 しかし、現在や将来はAIが活用され、企業が必要とする人材は大きく変化していると指摘する。辻監督は野球で礼儀や忍耐が身に付くと訴えても、競技人口減少に歯止めはかからないと説く。

「野球は本来、将棋のように頭を使うスポーツです。頭が良くなるのであれば、子どもに野球をやらせてみようと思う保護者はいます。野球を育児の一部にすることが大切です」

 育児の一部――。今も昔も習い事で人気の高いスイミングを例に挙げる。

「保護者が子どもにスイミングを習わせるのは、体が丈夫になる、風邪を引かなくなるといった考え方が浸透しているからだと思います。五輪選手にしたいと思っている保護者はほとんどいないはずです。子どもを育てる上で、スイミングが生活一部になっています」

 辻監督が10年ほど前に「脳サイン野球」を始めるまで、チームのメンバーは毎年25人前後だった。全国大会常連の強さを誇りながら、人数は増えなかったという。ところが、選手の考える力を育てる脳サイン野球に転換すると、加入希望者が増え、現在は100人近い大所帯となった。

 野球を始める時も、本気でプロを目指す親子は少ない。野球を通じて何を得られるのか。将来に生きる知識や能力が身に付くと発信できなければ、競技の衰退は避けられない。

(間淳 / Jun Aida)

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