「街に出たら多分危ない」 護衛が常駐…元DeNA乙坂が政情不安の国でプレーした理由

野球以外で外出したのは3度だけ【写真:本人提供】
野球以外で外出したのは3度だけ【写真:本人提供】

各球団に警備員と警察が帯同…野球以外で外出したのは3度だけ

 ベネズエラはここ10年以上政情不安が続いており、1割以上とも言われる国民が仕事と治安を求め、海外に流出し続けてきた。中には不法移民として国境を越えた人も少なくない。長らく続くインフレで頻繁に通貨が変わり、海外からの送金がない貧しい人たちにとっては、日々の食事もままならないと言われている。かつて石油で潤った社会主義国は、今や完全に別の姿に様変わりした。乙坂はなぜ、そんな国を選んだのか。その答えは明確だった。

「野球に無我夢中過ぎて、そこまで頭が回っていなかった。街に出たら多分危ない。でも、今の自分の目標は米国でプレーすること。そのためには、治安が悪くても飛び込んで野球をやりたい思いがあったんです」

 ベネズエラでは誘拐がビジネス化しており、野球選手は誘拐犯にとって格好のターゲットとなる。過去には助っ人としてウインターリーグでプレーするためにベネズエラに入国した選手が、空港到着直後に誘拐され、目隠しされて車で山中まで連れ去られ、金品を含めた荷物を全て盗られた後、身ぐるみ剥がされて捨てられたという事件もあった。夏にMLBでプレーする選手がオフに帰国中、強盗に襲われることも珍しくない。そのため、リーグでは選手たちの安全を確保するために各球団に護衛を配置。チームには常に警備員と警察官が帯同しており、彼らと一緒でなければホテルからも外出できないルールになっているという。

「僕のチームには護衛の警備員4人と警官2人がいて、遠征先へのバス移動の際も、パトカー2台とともに一緒に移動します。基本的にホテルと球場の往復だけで、それ以外で外出したのは3回だけ。キャンプ中のメディカルチェックと歯医者、あと3回目はクリスマスイブに警備員の人と一緒に近くの観覧車に乗ったくらいですね」

 他国では考えられないような野球漬けのホテル缶詰生活。当然ストレスも溜まるが、危険な目に遭ったのも1度だけだという。「怖い思いをしたのは、遠征移動中に山賊がバスに石を投げて窓ガラスが割れた時だけ。でも寝ていたので、その時は気づかなかったんです。ホテルの外に出たら危ないこともあるんでしょうけど、スーパーにも物はあるって聞くし、西側諸国で報道されていることは一部を切り取ったもので、全体像を映した真実ではないことも多い。自分の目で見て、肌で感じないと分からないと思います」

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