「自由にやると自分で考えるは違う」 阪神Jr.を初優勝導いた“教え過ぎない”指導

タイガースジュニアは上本博紀監督が率いた【写真:川村虎大】
タイガースジュニアは上本博紀監督が率いた【写真:川村虎大】

上本監督が選手に伝えたのは「なんでもいいから自分で考えなさい」

 昨年末に行われた「12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2022」は、タイガースジュニアの初優勝で幕を閉じた。率いた上本博紀監督は就任1年目での日本一。自らの経験から“教えすぎないこと”を徹底した。

 予選は2試合でわずかに5安打。少ないチャンスをものにし、堅い守りで勝ち進んだ。上本監督は、グラウンドでは常に選手に声をかけ、試合後には笑顔で選手たちに手を振る。「自分で考えてやってくれた結果です」。勝利した後のインタビューでは、毎回この言葉が出た。選手のことを強く思っていることが伝わってきたが、技術的な指導は「ほとんどしていない」と話す。

「『自分で考えてやりなさい』と口うるさく言ったくらいです」。最初は選手たちも「元プロ野球選手だから」と指導を“待つ”姿勢だったと言うが、「何でもいいから自分で考えなさい」と決して自ら積極的に教えることはなかった。

 この指導は自身のプロ野球での経験が原点だ。「自分で考えてプレーするというのはプロで活躍している人の絶対条件なので」。自身も独特なフォームで活躍。小柄ながらパンチ力もあり、選球眼もあったが、レギュラーを目指すために外野に挑戦した年もあった。常にプロとして生きる道を模索してきたからこそ、子どもたちにも“考える力”を求めた。

 選手たちには「間違いはないよ」と伝えてきた。「どんなことしても絶対に否定はしないようにしよう」と心に決めていたという。選手たちも徐々に自分たちで考え、最終的には自らウオーミングアップも考案するようになったという。

 この大会をもって選手たちはタイガースジュニアの活動を終了し、それぞれ次のステージに進む。「自由にやると自分で考えるは違う。次の場所でも自ら考えプレーしていってほしい」とエールを送る。日本一を獲ることが目的ではない。子どもたちの成長を第一に、上の世代での活躍を見据えた指導をしていた。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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