走攻守の基準を“超・具体化” 京都連覇の中学野球部が捨てた「頭でっかち」な指導

結果の指摘では選手が委縮…「プロセス重視」で好結果

「結果を指摘すると、選手は指導者の顔を見るようになってしまいます。基準を設ければ選手は思い切りプレーできます。切れの良いスライダーに三振しても、相手投手の力が上なので仕方ないとチーム全体で割り切って気持ちを切り替えられます」

 練習や試合でミスや課題が見つかった時はプロセスを振り返って、チームの基準が守れていたか共有する。基準を外れてエラーにつながった場合は、意識を徹底して失敗を繰り返さないように修正できる。基準通りにプレーした上で攻撃が無得点に終わった時は「良い攻撃ができた」と前向きになれる。審監督は「結果に対して何も言わなくなりましたし、失敗を怒らなくなりました」と話す。

 指導方針を転換したきっかけは2020年に立案して開催したイベント「野球フェスティバル」にあった。野球人口を増やす目的で地元の園児を対象に、日新中の野球部員が指導役を担った。柔らかい球でキャッチボールをしたり、園児に投げ方を教えたりする選手の姿を見た審監督は自身を見つめ直した。

「勝敗も大事ですが、野球の原点は楽しさにあると改めて思いました。選手が仲間と野球をする楽しさ、うまくなる楽しさを感じられる指導にしなければいけないと考えました」

 このイベントをきっかけに、チームは結果を残せるようになった。特別なトレーニングを導入したり、突出した能力のある選手が加入したりしたわけではない。指揮官が怒るのを辞め、選手への伝え方を変えた結果だった。審監督は「私1人ではできないことがたくさんあります。方針をチーム全体で共有して、部長やコーチ陣と役割分担できているところも好成績の要因です」と語った。

 ただ、大会の優勝は目的やゴールではない。「できないことができた瞬間、選手たちはそれぞれの表現方法で喜びを表します。それを見たり、感じたりする瞬間が一番の幸せでやりがい。高校でも野球を楽しんでもらえたらうれしいです」と審監督。指導者の考え方が変われば、選手も自然と変わっていく。

(間淳 / Jun Aida)

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