きっかけは「野球はやらせたくない」保護者の意見 少年野球コーチが体操クラブ創設の理由
“黄金期”の子どもたちにコーディネーショントレーニングとライフキネティックで成長後押し
少年野球チームの指導者たちが地域の子どもたちの成長を願い、新たな試みを始めた。東京・北区で活動する小学生対象の軟式「BLOSSOM BASEBALL CLUB」の監督、コーチが、脳で思い描いた通りに体を動かすことを目的とするキッズコーディネーショントレーニングと、脳科学と運動学を融合したライフキネティックを取り入れた体操クラブを4月に開講した。チームでも導入しているが、少年野球の枠を超えてでも伝えたい思いがある。
ある金曜日の夜。都内の小学校の体育館で子どもたちの声が弾んでいた。そばで見ている保護者にも自然と笑みがあふれる。「World Sports Club」では話題のリズムトレーニングもメニューに入っているため、テンポの良い音楽が流れる。跳び箱を使ったり、サイドステップをしながらボールを投げ合ったり、タイヤに乗った綱引き、パルクール(走る、跳ぶ、登るなどの動作で心身を鍛える運動方法)……遊びの中で子どもの能力を伸ばすメニューが次々と用意され、時間はあっという間に過ぎていく。最初はできなかった動きが繰り返しているうちにできるようになる。子どもたちの目は輝きを増していった。
指導に当たっている2人は少年野球チームの監督とコーチだった。甲子園にも出場し、社会人の強豪でもプレーした片山純一さん、軟式の社会人チームでプレーしていた石井翔平さんが、グラブとバットを使わずに子どもたちと向き合っていた。社会人まで野球を続け、勝負の世界にどっぷり浸かっていた2人。野球への深い愛情を持ちながらも、指導する子どもたちにはこの先、どのようなスポーツに進んでも、対応できる運動能力を身につけてほしいと願っている。
それぞれがキッズコーディネーションやライフキネティックなどの資格を取得し、少年野球チームのアップや練習メニューに取り入れている。野球以外の地域の子どもたちにも教えようと思ったきっかけは、少年野球を見学に来たある保護者の一言だった。その母親はコーディネーショントレーニングに興味を示していた。ただ、少しだけ様子が違っていた。片山さんは回想する。
「その方は『野球をやらせたくない』と。別のスポーツをお子さんはやっていました。でも、このような活動には興味があったということを聞きました。どのスポーツでも役立つ動きですし、もっと日本で広まってほしいと思っていました。だったら、野球以外の子にもどんどん教えていきたいなと思いました」