きっかけは「野球はやらせたくない」保護者の意見 少年野球コーチが体操クラブ創設の理由
野球が全てとは思わず「他のスポーツでも成功してほしい」と願う
コーディネーショントレーニングやライフキネティックは主にヨーロッパで広がりを見せているが、日本ではなかなかスポーツ競技と融合して指導する形は少ない。「体を動かすと子どもたちは笑顔になるじゃないですか。遊びの中で刺激を入れて、勉強や他のことにも頑張ってほしいんですよね。野球が全てじゃないですし……。自分たちの少年野球チームの子だって、ここから他のスポーツで成功してもらいたいという気持ちも持っています」。自身が少年野球チームを作った時と同じ気持ちで今回も体操クラブを発足させたのだった。
「BLOSSOM BASEBALL CLUB」は2023年1月に創設し、今ではもう部員が53人にもなった。新しいチームだが活動方針が賛同を呼び、学年によってはすでに部員募集を止めないといけないほどになった。とにかく「楽しむ」ことを一番に考え、子どもの心を育んでいる。
そんな指導者たちが野球の枠を飛び越えて、地域の子どもたちに感じて欲しいことがある。石井さんは「昔に比べ、子どもたちの運動量が少ないと感じています。そういう場所を提供できればと思っています」と一緒になって、楽しみながら体を動かしている。学校の放課後に体育館を使用し、幼稚園児から中学生を対象に全3クラスで実施している。コロナ禍で活発に外で遊ぶことがなかなかできなかった子どもたちも多くいたため、参加者の保護者からは「思い切って体を楽しく動かせる場所ができたことが嬉しい」という声も届いたという。
子どもの運動神経が著しく発達する時期を「ゴールデンエイジ」と言い、12歳までの時期を指すことが多い。ひと昔前は鬼ごっこや缶蹴り、だるまさんが転んだなど、無意識のうちに遊びで運動神経を発達させることができた。しかし、外で遊ぶ習慣が以前よりなくなった現代の子には、このように大人が活動の場を作ることも大切な使命と考えている。キッズコーディネーショントレーニングの動きは、たとえ遊びの延長上にあるとはいえ、頭の中が活性化される。「脳が疲れてきます……」(片山さん)と漏らすほど、大人でも刺激があるため、子どもたちは本当に楽しそうだ。
2人の指導者たちは自身の仕事を終えた金曜日にこの体操クラブの活動を行う。トレーニングウエアに着替え、子どもたちと汗を流していた。翌朝は少年野球の活動が待っている。今度はユニホームに着替えて、白球を追いかける。多忙な週末だが、それでも地域のゴールデンエイジに遊んで学ぶ大切なことを伝えたい。体操教室には野球を知らない親子もいるが、そんなことは関係ない。「あっという間の50分だったね」と石井さんは笑顔で授業を終えた。長い人生で様々な経験が人を成長させる。2人の野球人が見ているのは、子どもたちの笑顔と未来だった。
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