敵に「アウトをプレゼントする策」に疑問 強豪中学を率いた監督が掲げる“NG”

富山・氷見北部中ナインと田村剛監督(左端)【写真:野球部提供】
富山・氷見北部中ナインと田村剛監督(左端)【写真:野球部提供】

中学軟式全国大会の常連・氷見北部中を率いた田村剛監督

 つらく厳しい練習は何を目的に行うのか? 中学軟式野球で富山・氷見北部中を全国大会の常連に仕立て上げた田村剛監督(現・氷見西條中)は、スクイズのサインを出さないという。「子どもたちには本当にやってきたことを試合で出してほしい」と説明する。

 今年で指導歴28年を迎えた田村監督が、昔から変わらず掲げる野球は「打ち勝つ野球」。とはいっても、全員がオーバーフェンスを狙うわけではない。中学生は身長、体重と体格差が如実に表れる時期。「型にはめる指導はしません。仮に10人いれば全員が骨格や筋力は違います。個々に理想はあるので、異なったアプローチでそこに近づけるようにアドバイスを送っていきます」と語る。

 監督就任当初は「全くバントもせず、ガンガン打っていくスタイルでしたが……それじゃダメだと気付かされました」と振り返る。選手たちは“勝利”という成功体験を得ることで、成長していく。試合展開によって送りバント、盗塁などのサインを出すことは増えたが、自身の中で決め事があるという。「スクイズだけは出さないようにしてます」と明かす。

 スクイズの他にも、軟式野球では1死三塁などでエンドランや、ボールを叩きつけてゴロを打ち、確実に1点を取る作戦も見受けられる。田村監督は「色々な野球があっていいと思います」と前置きした上で「練習の中で本当にやってきことを出してほしい」と、子どもたちに伝えている。

「毎日のようにノックを受け、バットを振る。打者は打つために厳しい練習をしています。そのなかでアウト一つをプレゼントする策はどうなのかと。周りからは『もっと使えばいいのに』と言われるのですが、そこは頑なに」と笑う。そして「相手のミスで取った点数などは、そこで喜ぶことはないです。それで勝ったとしても、自分たちの本当の野球はできているのかと」と疑問を抱く。

 高校に進学すれば甲子園が目標になり、強豪校では組織的な野球がより求められる。田村監督は「本人の頑張り次第で変わっていく」と、中学では可能性を狭めることのない指導を心掛けている。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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