背番号をもらえなかった君へ 10年後をより良く生きるために…“腐る”前にすべきこと

少年野球の指導者を約20年務める年中夢球さん【写真:伊藤賢汰】
少年野球の指導者を約20年務める年中夢球さん【写真:伊藤賢汰】

最後まで仲間を支えた経験が10年後の自分を後押しする

 小さい頃から甲子園を目指し、夢中で白球を追いかけてきた選手が迎える“最後の夏”。晴れてベンチ入りできた選手がいる一方で、背番号を得られず涙を流す選手もいる。むしろ、後者の方が圧倒的に多いだろう。悔しさを抱えた選手たちは、どう心を持ち直せばいいのだろうか。リトルリーグなどで約20年指導者を務め、野球講演家として活動する年中夢球さんが、“夢破れた”選手に未来へのメッセージを送る。

「涙を流すくらい悔しいのは、それだけ野球を頑張ってきたという証し。背番号をもらえなかったという結果は覆らないけれども、努力してきた事実は一生消えないし、絶対に今後の人生の財産になります。まずは『悔しい』という感情を持てたことを誇りに思ってほしいですね」

 自分を否定された気持ちになったり、家族に申し訳なく思ったり、様々な思いが湧き出てくることだろう。そうした“負の感情”を打ち消すためにも大切なのが、「最後まで一生懸命チームをサポートしよう」と前を向く気持ちだ。「ふて腐れて終わる人は、社会に出ても、すぐにふて腐れる人間になってしまう。逆に悔しさをこらえてチームを応援できた選手は、『あの時、頑張って仲間を支えたな』という経験が、社会に出て困難に直面した時に自分の背中を押してくれます」

 たとえベンチ外だとしても、最後の試合が終わるまではチームの一員。「10年後の自分を、過去の自分が後押ししてくれる。そんな人間になるためにも、最後まで一生懸命応援してほしい。それが仲間のためにもなり、自分のためにもなるんです」と年中夢球さんは力説する。

球児は同じ方向を向いて咲く「ひまわり」であってほしい

 逆にベンチ入りした選手たちにとっては、背番号は単なる“数字以上”のものになる。つまり、スタンドの仲間たちの思いも背負ってグラウンドに立つということだ。「チャンスの場面で打席に立った時や、高校野球最後の打席かもしれないと思った時には、必ずスタンドを見てほしい。その時に、どれだけ仲間から力をもらえる選手であるかが大事」と年中夢球さん。そして、理想のチームについて、球児たちをある花に例えて語ってくれた。

「高校球児が咲かせる花は『ひまわり』だと、私はよく言います。“向日葵”と漢字で書くように、太陽に向かって咲く。同じように球児たちも、花を咲かせるまではいろんな方向を向いていても、最後の夏は、皆が同じ方向を向いて咲いてほしいし、そんなチームであってほしいですね」

 高校を最後に野球から離れる球児もいる。それまでの「野球人」が普通の「人」となった時にこそ、野球を通じて何を学んできたかが問われるという。

 ひまわりの花言葉には「あなたを見つめる」というものがあるそうだ。努力する大切さ、周囲への感謝、そして、仲間たちの姿を見つめ、励まし続ける思いやり……。今後の人生をより良きものにするために、グラウンドに立つプレーヤーはもちろん、スタンドに立つ“応援プレーヤー”も、最後のゲームセットの瞬間まで完全燃焼してほしい。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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