方針は1つ、方法は多数…大人同士の“食い違い”をどう防ぐ 少年野球の専門家2人が助言
怒鳴るか褒めるかは「方法」…指導「方針」はチームに1つが重要
少年野球のチームでは指導者が複数いるケースが多い。選手や保護者にとって悩みの1つにもなるのが、指導者によって方針が異なること。少年野球のカリスマ指導者と全国を回る野球講演家の2人が先日、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」で対談し、解決策を提案した。
少年野球チームの保護者から「TURNING POINT」に、ある悩みが寄せられた。「私は学童野球のチームでコーチをしていますが、他のコーチとの考え方の違いに悩んでいます。私は子どもたちをサポートする指導をしたいのですが、コーチの中には練習中も試合中も怒鳴る指導をする人がいます。方針の食い違いを埋めるには、どうしたら良いですか?」
同じ問題に直面するチームや保護者は少なくないだろう。
学童野球や硬式クラブチームを20年間指導した経験を持つ野球講演家の年中夢球さんは、「指導者の方針は同じでなければいけません」と話した。その上で、今回の質問は「方針」ではなく「方法」に食い違いがあると指摘した。
「根っこの方針が違うのであれば移籍するしかないかもしれませんが、目指す方針にたどり着くまでの方法は違っても良いと思います。選手を怒鳴るのか、褒めるのか、質問の内容は方法の問題です」
「指導者の食い違いで一番かわいそうなのは選手」
年中夢球さんは自身がチームの指導をしていた時、こうした不満や疑問を限られた人で共有しないように促していた。その理由を「みんなの前で言ってもらえばクレームではなく、問題提起になります。指導者の食い違いで一番かわいそうなのは選手です」と説明する。チームでは毎週土日に指導者全員で方針の確認をしていたという。年中夢球さんは「分かっていても人間は忘れるので、大事なことは繰り返し確認します」と語る。
3度の全国制覇を成し遂げている滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督は、複数のコーチ陣と食い違いが生じないように気を付けている。例えば、新しい練習法を取り入れる時は全てのコーチを集めて意図を共有する。時には保護者を集めて説明する。辻監督の根底には「大人の考え方は全く同じではないものです。ただ、コーチ陣同士で否定し合わないようにしたいです」という思いがある。
コーチに、特定の学年だけ指導させる方法をとらないのも、指導者全体で同じ方向へ進む狙いがある。コーチによって教える頻度が多くなる学年はあるものの、辻監督を含めて全ての指導者が全ての選手を見るようにしているという。大人の都合や考え方で、子どもたちが野球を楽しむ機会や成長する可能性を奪ってはならない。
(間淳 / Jun Aida)
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