ポニー決勝で“英断”…両チームVで決着 猛暑の中で延長、何より優先した選手の健康

両チーム優勝で健闘を称え合う佐賀ビクトリーと関メディベースボール学院【写真:片倉尚文】
両チーム優勝で健闘を称え合う佐賀ビクトリーと関メディベースボール学院【写真:片倉尚文】

佐賀ビクトリーと関メディベースボール学院の頂上決戦は延長11回5-5で引き分け

 日本ポニーベースボール協会が主催する「マルハングループインビテーション 大倉カップ 第49回全日本選手権大会 Supported by エイジェック」の決勝が26日、東京・江戸川区球場で行われ、佐賀ビクトリー(九州連盟)と今季ポニーリーグに転籍した関メディベースボール学院(関西連盟)が延長11回5-5で引き分け、両チーム優勝となった。

 猛暑の中、4時間近い熱戦となり、同協会が選手らの健康を考慮して打ち切りを決めた。中学硬式野球5団体の優勝チームが頂点を競う「1stエイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」(8月28、29日)の出場権は抽選の結果、佐賀ビクトリーが得た。

 ポニーリーグの頂点を決める試合は決着がつかなかった。息もつかせぬ、追いつ追われつの展開。午前8時46分に始まった試合は正午を過ぎても勝負がつかない。猛暑の中での一戦に、日本ポニー協会は打ち切りを決めた。「気温36度の中で試合時間が4時間に達しようとしていたので決断しました」と日本協会の那須勇元事務総長が説明した。今年初めて実施される「1stエイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」出場チームは抽選に委ねられ、佐賀ビクトリーが権利を得た。

 佐賀ビクトリーナインは涙に暮れていた。うれし涙ではなく、悲しみの涙だった。今大会に出場していた佐賀ビクトリーのBチーム「佐賀ネオビクトリー」で監督を務めていた増田憲一さんが22日に42歳の若さで息を引き取った。大会辞退も考えたが、増田さんの家族から「辞退は望んでいないと思います」との言葉を受け、試合に臨んでいた。

 ただ、チーム内の動揺を最小限に食い止めるため、古澤豊監督は選手には伝えず。体調を崩して入院したと言い聞かせていた。“事実”を告げたのは引き分けで両チーム優勝が決定し、抽選に臨む直前。その瞬間、子どもたちから嗚咽が漏れた。

両校優勝の後、コーチの訃報を聞き泣き崩れる佐賀ビクトリー【写真:片倉尚文】
両校優勝の後、コーチの訃報を聞き泣き崩れる佐賀ビクトリー【写真:片倉尚文】

敗色濃厚から同点に「不思議な力が働いた」

 決勝戦は増田さんの思いが乗り移ったかのような試合だった。2点ビハインドで最終7回の攻撃も2死走者なし。敗色濃厚の展開からチャンスを作り、2本のタイムリーで逆転した。その裏に追いつかれるも勝ち越しは許さず、延長に入っても粘りの守備で勝ち越されることはなかった。

「正直絶対に負けられないと思っていました」と古澤監督。「子どもたちに嘘をついている状態で、本当にしんどかったんですが……1球1球つなげと言っていたら、まさかの展開で。不思議な力が働いたんだと。(増田さんが)間違いなく力を貸してくれたんだと思います。そうでなければこんな試合はできません」と古澤監督は振り返った。

 耐え抜き、頂点に立った佐賀ビクトリー。今度は中学硬式野球5団体の王者が集う「1stエイジェックカップ 中学硬式野球グランドチャンピオンシリーズ」に向かう。「ポニーの代表として恥ずかしくないプレーをしたいですね」と指揮官は力を込めた。

(片倉尚文 / Naofumi Katakura)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY