野球人口減少に「もっと討論しないと」 アマ球界の交流不足…元燕の大砲が抱く“危機感”

女子ポニーワールドシリーズで優勝した15U日本代表にペナントを渡す広澤克実理事長(左)【写真:高橋幸司】
女子ポニーワールドシリーズで優勝した15U日本代表にペナントを渡す広澤克実理事長(左)【写真:高橋幸司】

日本ポニーベースボール協会の広澤克実理事長が語った女子WS開催の効果

 ポニーリーグでは初となる女子選手の国際大会「ECCインビテーショナル SSKカップ ポニー・ガールズ・ベースボール・ワールドシリーズ」が、7月31日から5日間に渡って栃木県を舞台に開催され、15U(15歳以下)の部、OPENの部ともに日本代表が優勝を飾った。しかし、勝ち負け以上の価値がこの大会にあることも忘れてはいけない。それは、選手同士の「交流」によって、世界の野球や文化を学ぶ機会になったことだ。

 今回の大会には日本のほか、米国、オーストラリア、中国、台湾、香港からチームが参加。選手たちは試合や宿舎での生活で、“野球”という共通言語を通して世界と接した。15U代表の主将を務めた福田美羽(羽田アンビシャス)は「オーストラリアの選手たちとインスタを交換しました」と笑顔で語るなど、良い刺激を得たようだ。

 そうした中学生たちの姿に目を細めていたのが、日本ポニーベースボール協会の理事長を務める広澤克実氏だ。

「本当に選手たち同士で、よくしゃべっているんですよ(笑)。相手ベンチまで行って話をしていることもありました。女子の方が、その辺りは物おじしない印象がありますよね」

 広澤氏自身、世界に触れることが成長につながると、身をもって経験している。初めて日の丸を着けたのは明大時代の日米大学野球。1984年にはロス五輪代表として金メダル獲得に貢献した。のちにシーズン70本塁打を放つマーク・マグワイア(カージナルスほか)や、巨人でもプレーしたシェーン・マック(ツインズほか)ら、そうそうたるメンバーと対峙。その経験が、ヤクルト・巨人・阪神の主砲として通算306本塁打を放つ礎となった。

「初めて米国に行ったときは、どの球場に行っても内野まで天然芝で驚きました。逆に日本は土のグラウンドが多い。阪神の新外国人が甲子園でビックリするのも、そこなんですよ。だから、今回の米国代表も慣れない環境で守りにくさもあったと思いますが、よく対応していたと思います」

実感した中学生女子のレベルの高さ…だからこそ「裾野を広げていかないと」

 今回の会場の1つ、広澤氏の地元でもある小山市は、土のグラウンドに水を撒いても、あっという間に乾いてしまうほどの連日の猛暑。しかし、日本が米国を14-2で破った15Uの決勝戦は、そんな猛暑を吹き飛ばすような爽快な一戦だった。「男子の中でプレーしても遜色ないような選手もいたし、改めて、日本の13~15歳女子のレベルの高さを感じました」と広澤氏も評価した。

 先日、甲子園で決勝が行われた女子高校野球や、関東の高校・大学・社会人・クラブチームによる「ヴィーナスリーグ」は、近年は参加チーム数が増えて盛り上がりを見せている。とはいえ、広澤氏が真っ先に口にするのは“危機感”だ。「男子にしても女子にしても、こういう13~15歳で野球をする子を増やしていかないと、高校にもヴィーナスにも選手を供給できません。もっと裾野を広げていかないと」。

 実際に、日本高野連の登録校数・選手数は減少傾向が長く続く。広澤氏が懸念するのは、プロ・アマや連盟の垣根を越えての、問題解決に向けた「話し合い」や「交流」の少なさだ。

「やはり、討論をしないと。アイデアを出し合わないと。中学野球にも連盟同士のちょっとした壁がある。練習試合くらい、普通にやっていいじゃないですか。まずは『交流』することが大事だと思うんです」

 実際にポニーリーグは、球数目安や低反発バットの導入を進めるなど、“選手目線”に立った発想を取り入れてきた。「まだまだ志なかばですが、少しずつ変わってきている。これからも、固定観念にとらわれず、いいアイデアは取り入れていきたい」と広澤氏。

「交流」こそが第一歩。今回の女子選手による国際大会実施も、新しいアイデアの一環だ。世界はもちろん、まずは足元の国内から、球界の問題改善、発展に向けた積極的な対話を、広澤氏は望んでいる。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY