野球オンリーの「勝利至上主義にならないで」 元燕の新人王が伝える“遊び”の重要性
スイッチの名選手を真似して左右のバランスを会得した笘篠賢治氏
1989年にセ・リーグ新人王に輝くなど、ヤクルト、広島で俊足好守のスイッチヒッターとして活躍した解説者の笘篠賢治氏。硬式、軟式野球をプレーした3人の息子を育てた経験も踏まえて、将来の成長に向けて「少年野球の時期に取り組んでおくべきこと」を聞いた。キーワードは「バランス感覚」と「広い視野」だ。
「ボールを投げるにしても、打つにしても、守るにしても『バランス感覚』を養うことは、すごく大事です」
そのためにも野球だけでなく、何でもいいので、“遊び感覚”でいろいろなスポーツにチャレンジしてみることも幼少時は大切だという。それは、さまざまな体の使い方を覚え、また、野球に生かせる共通点を発見する機会にもなる。笘篠氏自身は息子たちを体操教室に通わせていたことがあるといい、「体幹のバランスを鍛えるのにもよかった」と語る。
笘篠氏自身がバランス感覚を鍛えたのも、“遊び”だったそうだ。俊足のスイッチ打者だったV9巨人のリードオフ、柴田勲さんを真似して、小さい頃は草野球で右だけでなく左打席でも打っていた。「大学(中大)からスイッチになりましたが、小さい時に遊びでやっていたおかげで違和感なくできたんです」。“遊び感覚”での両打ちで、自然に偏りのない体の使い方を会得していたわけだ。
ポジションを入れ替えての守備練習は「プロでもやること」
野球の中でも、さまざまな守備位置を経験することで、各ポジションでの体の使い方の違いや、野球の見え方の違いに気づくことができる。少しでも経験があれば、上のレベルに進んだ時にそのポジションを任せられても、ゼロベースよりも戸惑うことなく取り組める。
「内野手と外野手を入れ替えて守備練習をすることは、プロ野球でもやっていることです。そこで連係プレーをすると、『こういう送球は捕りにくいんだな』というように相手の気持ちを知ることができ、本来のポジションに戻った時に生かせます」
さまざまなスポーツを経験する、複数ポジションに挑戦する。いずれも、幅広い視野を身に付けることにつながり、それはグラウンド外の生活にも生かせるだろう。
「勝利至上主義にならず、楽しませながら、いろんな経験をさせてください。遊ばせてあげてください。その中で、子どもたちが自分に何が合うのか、適材適所も見つけられるはずです」と、笘篠氏は保護者や指導者へアドバイスを送った。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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