少年野球にキャプテンは必要? 全国Vのシニアが実践「みんなで言い合う」チーム作り
今夏日本一の世田谷西シニアは「みんなで考えてみんなで言い合う」
中学硬式野球の日本一を決める「第17回全日本中学野球選手権大会 ジャイアンツカップ」に出場している世田谷西リトルシニア(東京)は、他の強豪チームにはない取り組みを行っている。主力でリーダーシップを備えた選手を主将に据え、チームの団結を図るのが一般的だが、主将を固定せず学年によっては不在の代もあるという。
吉田昌弘監督が意図を説明する。
「大人の野球だと、キャプテンが悪役や嫌われ役になったりしてチームを作るというのがありますけど、中学生でそういう立ち回りをやらせるのがあまり好きではありません。キャプテンがいない方が、頼ることもない。練習も試合も誰がキャプテンか分からないチームが一番強いんじゃないかなと。みんなで考えてみんなで言い合うというのがウチの指導方針としてあります」
現3年生は入部当初から練習試合でもなかなか勝てなかった。吉田監督は「体は小さいし、素材的には最弱」と笑う。ただ「この代は強くなる」という確信があったという。先攻後攻を決めるジャンケンが強い選手をその試合のみ主将に据える時もあったが、夏の大会前から、主力ではない藤原康聖外野手(3年)を主将に固定した。
理想の主将は誰に対しても「優しくできて野球が大好きな子」
「凄い元気を出して、チームに気を遣ってやってくれる。みんなが信頼しているのが分かる」。その藤原を中心にしてチームは一致団結。8月上旬の「エイジェックカップ第51回日本リトルシニア日本選手権大会」で2017年以来、5度目の全国制覇を達成するまでに成長した。
吉田監督は、半ばなし崩し的に主力を主将に任命することを嫌う。「野球が上手なキャプテンだと、その子の考えとか意見だけになってみんな何も言えなくなる」。そこには主力も控えも関係ない。「キャラクターがいい子。上手な子にも下手な子にも優しくできて、野球が大好きな子」が主将の候補に挙がる。そういう選手がいる代は、必ず強くなるという確信を持っている。
ポジションも決めつけることなく、複数を経験させて適性を見極める。主将はいなければならないという固定観念も一切ない。「ジャイアンツカップのような大会を通じて、勝ったり負けたりすることでいろいろと勉強してくれたらいいなと。思い出に残るように一生懸命やってほしいですね」。
主将に全責任を負わせたり、勝利至上主義の指導者もいたりする中で、世田谷西シニアは、選手をいい形で次のステージへ導くための指導を日々行っている。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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