中学野球でも進む“脱丸刈り” 競技人口減に歯止め…指導者実感「トレンドになっていく」

約3年前から髪型を自由にする静岡裾野リトルシニア【写真:加治屋友輝】
約3年前から髪型を自由にする静岡裾野リトルシニア【写真:加治屋友輝】

取手リトルシニア・石崎学監督は「丸刈りとか長髪とか関係ない」

 中学硬式野球5団体が一堂に会する「第17回全日本中学野球選手権大会 ジャイアンツカップ」。高校野球の「脱丸刈り」の流れを受け、スポーツ刈りや、風になびく長髪もいるなど、各団体やチームによって髪型もさまざまだ。

 静岡裾野リトルシニアは3年ほど前から丸刈りをやめ、髪型を自由にした。佐藤裕徳監督は「丸刈りだと野球をやりたくないという子が増えてきている。そうすると選手も入ってこなくなる」と方針転換。「自分が現役の頃は丸刈りで、長髪の学校には絶対に負けたくないという気持ちはありましたけど、今は特にはないですね」。自主的に丸刈りにする選手もいるが、長髪の選手が圧倒的に多いという。

 武蔵府中リトルシニア(東京)も3年前から自由化し、今は丸刈りと長髪で半々だ。小川紀輝監督は「髪型は強制していません。伸ばす子も増えてきましたね。ただ、スポーツをやる上でだらしなくならないようにとは指導しています」。主将の大鳥源太内野手は「野球をするうえで髪型は関係ないと思います。ただ、伸ばすといろいろ言われる風潮は残っていると思うので、振る舞いや礼儀はきっちりしないといけない」と、長髪にすることで自覚ある行動を心がけているという。

 取手リトルシニア(茨城)や高崎中央ボーイズ(群馬)は、創部当初から髪型に規定を設けなかった。取手の石崎学監督は「自分が学生の頃から丸刈りとか長髪とかは関係ないと思っていました。だから自分のチームを作った時から自由にしています。ただ、『野球をやる人は丸刈り』と決めている家庭もあるので、ポツポツと丸刈りもいますけど、長髪の方が多いですね」。

 高崎中央ボーイズの倉俣徹監督も「ヘアスタイルで野球をやっているわけではないので。トレンドになっていくのではないでしょうか。理解がある監督が増えていると感じます」と同調する。最初から髪型が自由ならば、父兄からの反対などもなく、選手も気を遣わずに髪型を選べる。

選手が自主的に丸刈りにして試合に臨む青森山田リトルシニア【写真:加治屋友輝】
選手が自主的に丸刈りにして試合に臨む青森山田リトルシニア【写真:加治屋友輝】

選手たちの自主的な「五厘刈り」で臨むチームも

 青森山田リトルシニアは、最近の中学チームでは珍しく、ほぼ全員が五厘刈りでジャイアンツカップに臨んでいる。中條純監督は「関東や関西のポテンシャルの高い子たちと戦うために、ウチはどこにも負けないチーム力を大切にしていて、そこを極める中で、髪型もみんなでまとまっていこうということです」。五厘刈りは特に強制しているわけではなく、個々がホテルで自主的に行ったという。

 高校野球では、1990年代前半ごろに天理(奈良)や仙台育英(宮城)といった強豪校が長髪を解禁したが、最近ではまた丸刈りへと逆戻りの傾向があった。一方、今夏の甲子園では慶応(神奈川)の長髪が話題を呼んだ。髪型を個性ととらえ、全員が自由に丸刈りや長髪を選択することができれば、野球人口減少の一助となるのではないだろうか。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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