小6で衝撃の124キロ…速球一本で押す本格派左腕に球場どよめき 「全ての大会で活躍を」
東京・レッドサンズの藤森一生投手は「巨人ジュニアでも活躍したい」
掛け値なしの「未来モンスター」が、夏の夢舞台を席捲した。小学生の甲子園と呼ばれる「高円宮賜杯第43回全日本学童軟式野球大会 マクドナルド・トーナメント」で、4試合を勝ち抜いて4強入りした東京・レッドサンズの藤森一生(ふじもり・かずき)投手だ。165センチ、51キロのサウスポーは、5連戦となった準決勝で敗れた(自責点0)ものの、自己最速タイの124キロをマーク(球場表示)するなど、剛速球で大田スタジアムのスタンドをどよめかせた。
小学生にとっての「120キロ」は、高校生にとっての「155キロ」に匹敵するほど高い壁。小学生チームの日本一を決める同トーナメントを、筆者が初めて取材したのは2010年だが、高い壁を越えた投手をほかに知らない。
今夏の3回戦で対戦した、兵庫・北ナニワハヤテタイガース(3-4で惜敗)の石橋孝志監督は「(藤森の球の)速さはウチが優勝(1988年)したときの嘉勢(敏弘、現阪神打撃投手)と同じくらい」と、その後に大阪・北陽高で甲子園に出場し、オリックスでもプレーした35年前のV左腕を思い出していた。
大人並みのサイズと力任せのプレーで名を上げる6年生は例年、各地にいる。球速と投球フォームの緩急を駆使する投手は、全国舞台では珍しくない。「上の学年には速球だけだと打たれてしまうので」と、藤森も5年生までは場面に応じたギアシフトなど技巧を駆使した投球も見られた。が、最上級生になると、開始からほぼ速球一本で押しまくる本格派のスタイルへと昇華してきた。
「去年の夏の全国準々決勝で、自分が打たれて負けて悔しかったので、この1年は死ぬ気で練習してきました」
正月明けから父と共にキャンプで走り込み
2023年の始動は正月2日。父親と茨城県の大洗でキャンプを張り、太平洋を眺めながら連日走り込んだ。ダッシュも30本、40本。スポーツの経験も豊富な父・仁さんの趣味はアウトドアで、メニュー消化後はテントを張っての実際のキャンプ生活を父子で楽しんだという。
「一生は男4兄弟の末っ子。次男までは『昭和の指導』で厳しくやらせた中で、一生はプラスチックバットで兄たちに挑んでは打てずにずっと泣いているような子でした」
細身を目いっぱいに使った美しい投球フォームも、50メートル走6秒84の俊足も、努力で手に入れた。6月からは「負けたら終わり」の大会でチームを勝利に導きつつ、自己最速を度々更新。そんな日々も8月10日、全国準決勝で終わると、しばしの号泣の後に穏やかな表情で口を開いた。
「自分が全国でも少しは通用するのはわかりました。野球人生がこれで終わるわけではないので、中学・高校であったり、全ての大会で活躍していきたいと思っています」
父の“昭和の指導”は、対人のマナーや言動の部分にも及んでいるという。
○大久保克哉(おおくぼ・かつや)1971年生まれ、千葉県出身。東洋大卒業後に地方紙記者やフリーライターを経て、ベースボール・マガジン社の「週刊ベースボール」でロッテと大学野球を担当。小・中の軟式野球専門誌「ヒットエンドラン」、「ランニング・マガジン」で編集長。現在は野球用具メーカー、フィールドフォース社の「学童野球メディア」にて編集・執筆中。
https://www.fieldforce-ec.jp/pages/want-to-know
(大久保克哉 / Katsuya Okubo)
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