157センチでも全国の舞台で活躍 中学硬式強豪の“可能性を高める”育成法

取手シニアを率いる石崎学監督(右)【写真:加治屋友輝】
取手シニアを率いる石崎学監督(右)【写真:加治屋友輝】

取手シニア・石崎学監督「ウチを通り過ぎていく感覚で育てています」

 中学硬式野球の日本一を決める「ジャイアンツカップ」の昨年王者、取手シニアを率いる石崎学監督は、投手育成に定評がある。専大松戸(千葉)のプロ注目右腕・平野大地投手を擁した現在高校3年生の世代は、「高校で背番号『1』を6人つけていました」とうれしそうに話す。その指導方針の裏には、「簡単に諦めさせない」というモットーがある。

「ちょっと打たれたから腕を下げるとか、体が小さいから野手にするということはありません。ウチを通り過ぎていく感覚で育てています」。身長189センチの140キロ右腕・朝来友翔(あさき・ゆうと)投手や、落差の大きいカーブが武器の157センチ左腕・赤津翔馬投手ら、体形や球速にこだわることなく、バラエティ豊かな投手を育成している。球数は練習や実戦も含め、週250球を厳守。家でのキャッチボールも禁止して投手の肩肘を守っている。

 科学の力も積極的に活用する。「トラックマン」や「ラプソード」などの機器を定期的に使い、球速回転数などを計測。「トラックマンやラプソードの数字は大事にしています。僕の目より科学の目の方が大事ですから。その数字を選手に落とし込んでいます」。赤津は最速115キロながら、真っ直ぐとカーブの変化量は都市対抗で勝利する社会人投手並みという。当然、打者はとらえたと思ってもバットの芯を外れたり、タイミングがずれたりして凡打を繰り返す。

 18日に行われたジャイアンツカップ準々決勝の静岡裾野シニア戦。初回に4点を失い、必死の追い上げを見せるも4-5で破れ、連覇は夢と終わった。「7番・左翼」で出場した赤津は、2回から2番手で登板して1回2/3を1失点で降板。その後は右翼に回るも、無安打に終わった。

 石崎監督は「(3番手投手の)アクシデントがあった時のために、赤津を外野で残しました。彼は打撃の感触も良かったし、守備範囲も広いので」と最後まで信頼を寄せた。赤津も「自分はもともと投手を希望していて、自分の将来を考えてくれて、外野でも起用してくれました。本当に感謝しています」と涙ながらに語った。

 取手シニアは基本的に、投手と野手で分けることなく、全員が同じ練習メニューをこなす。「中学は全員二刀流だと考えています」と石崎監督。指導者が決めつけることなく、選手の可能性を信じて次のステージへと送り込む。OBたちが高校で活躍する理由がよく分かる。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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