四国の中学強豪の“斬新”ユニホーム 認知度向上へ…指揮官が重視する「保護者の思い」

宇和島ボーイズ・小川洋監督(左)【写真:加治屋友輝】
宇和島ボーイズ・小川洋監督(左)【写真:加治屋友輝】

宇和島ボーイズ背番号の上に苗字ではなく名前をアルファベット表記

「MASATO」「DAIA」「EITO」「HAYATO」「RINSEI」……。愛媛の中学硬式野球チーム「宇和島ボーイズ」のユニホームは、背番号の上部分を苗字ではなく、名前をアルファベットで表記している。愛媛県のボーイズリーグでは数チームが名前表記のユニホームを採用しているというが、全国的に珍しいと言えるユニークな取り組み。小川洋監督も「よく言われます」とうれしそうに話し、ユニホームを着る選手の背中に目をやった。

 昨年のチームまで、ユニホームの背中は背番号のみだったが、新チームに移行するタイミングで父母会からユニホーム変更の申し出があった。1988年選抜大会で宇和島東高を初出場で優勝に導いた時のエースだった小川監督は、選手や保護者の考えを重んじ、ユニホームのデザインを全て一任した。

「保護者から『デザインも全てこちらで決めていいでしょうか』ということだったので『どうぞどうぞ』と。僕もそこまでこだわりがあるほうではないので。そうしたら後ろに名前が入っていました(笑い)」。ただ、自身の背中は「OGAWA」表記。「『HIROSHI』と入れるのは恥ずかしいので……『苗字にしてよ』と言いました」と照れ笑いを浮かべた。

 プロ野球界では1994年、オリックスの「ICHIRO」(イチロー、本名:鈴木一朗)、「PUNCH」(パンチ、本名:佐藤和弘)を端緒に、名前やニックネームを登録名として背中に表記するケースが増えた。オリックスは今年5月、胸の球団名と背中のネームをカタカナ表記にした特別ユニホームを使用して話題になった。

ジャイアンツ杯に初出場…1回戦を劇的サヨナラで突破

 山下舜平大投手は「ペーター」、育成ドラフト4位ルーキーの茶野篤政外野手は「チャーボー」といったように、自身のお気に入りニックネームをカタカナで記すことで、子どもたちも読みやすく、認知度も上がった。形式にとらわれることのないこういった取り組みは、中学球界にも徐々にではあるが浸透しつつある。

 昨年9月の新チーム発足時から名前入りユニホームを着用する宇和島ボーイズは、今年4月の「第14回少年硬式野球四国選手権大会」で優勝。中学硬式日本一を決める「第17回全日本中学野球選手権大会 ジャイアンツカップ」に初出場した。

 16日の守山シニア(滋賀)との1回戦では4-3で逆転サヨナラ勝利。175センチ、83キロの3番打者・谷渕瑛仁(えいと)捕手は開会式後に行われたバットスイング計測会で、出場選手中2位の123.4キロをマークするなど、ポテンシャルの高い選手も多い。

 小川監督は「ウチは大きなクラブチームでもないし、全員で野球する中学生らしいチーム」と評する。地方の小さなチームからでも、取り組み次第では野球界に与える影響力は多大にある。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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