高まる女子野球熱…入団希望者が激増 広島が“選抜チーム”を支援する意義と課題

「全日本中学女子軟式野球大会」に出場したオール広島ガールズ【写真提供:広島東洋カープ】
「全日本中学女子軟式野球大会」に出場したオール広島ガールズ【写真提供:広島東洋カープ】

広島県で高まる女子野球熱、広島球団は小中学生の選抜チームをバックアップ

 近年、西武や阪神、巨人などのNPB球団が女子硬式野球チームを編成するなど、女子野球の普及に注力。広島は小中学生の選抜チームをバックアップしている。用具や練習場の提供に加え、球団OBの浅井樹氏、桑原樹氏を指導者として派遣するなど技術向上にも力を注いでいる。

 背景には、女子選手が野球を続けるのに困難な環境を改善したいという思いがある。広島県内で野球チームに所属している女子小学生は約100人。その大半が中学生になるとやめてしまうため、受け皿となる女子野球チームを増やして高校まで続けられるよう、球団として競技環境向上に取り組んでいる。

 2021年に女子野球界に起きた画期的な出来事も、球団の思いを後押しする。球団で野球振興グループ課長を務める三雲曉さんは、「3年前に甲子園で女子高校野球の決勝戦が行われ、日本の女子野球の歴史が変わったと思います。どれだけ憧れがあっても甲子園を目指せない時代が続いた中、甲子園を目標にできるようになったのは本当に大きいと思います」と力を込める。

 球団OBが指導することで選手に与える影響も大きい。中学生の選抜チーム「オール広島ガールズ」で監督を務める浅井樹氏は、「技術的なアドバイスも大事ですが、選手の背中を押してあげられるかも指導者の役割。選手が失敗を恐れて一歩を踏み出せない時、プロを経験してきた人間が言うんだから大丈夫だよと思ってもらえたら僕たちが関わっている意味があると思っています」と話す。

お母さんとキャッチボールする子が増えたら…担当者が見据える未来

 中学女子野球の全国大会優勝を目指す「オール広島ガールズ」は、球団がバックアップして以降、選抜チームへの希望者が増えた。2022年は26人から20人を選んだが、今年は41人から25人を選んだ。「選手が増えたことで出場機会が限られるなど課題も見えましたが、選手が集まってくれるのは女子野球が浸透してきたということ。選ぶ苦しさはありますが、希望者が増えたことは本当にありがたいです」と浅井氏は感謝を口にする。

 選抜チームならではの課題もある。「普段選手たちは地域のクラブチームなどで練習をしています。チーム方針を大きく変えることができないだけに難しさはあります」と浅井氏が話すように、チームプレーの成熟にかける時間が少ないため、試合で緻密な作戦がとれない実情もある。オール広島ガールズは、昨年も今年も全国大会で初戦敗退。今後は、選抜チームならではの戦い方を模索することも必要になりそうだ。

 ただ、広島球団が支援するようになり、女子野球の注目度が増しているのは事実だ。「女子野球に携わるようになって、子どもたちがお母さんとキャッチボールする時間が増えたらいいなと考えるんです。野球を始めたきっかけはお父さんとのキャッチボールという人は多いと思います。お母さんが野球の楽しさを教えられるような時代に変わっていけば、野球をする子どもたちも増えるのではないかと思います」と三雲氏は将来を見据える。

 広島県では、2020年12月に三次市と廿日市市が全日本女子野球連盟から「女子野球タウン」として認定を受けるなど、行政や地域も一体となって女子野球を応援する気運が高まりつつある。中長期的な視点で女子野球を後押しする広島球団の取り組みがどんな成果をもたらすか、注目が集まっている。

(真田一平 / Ippei Sanada)

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