「ミットを止める」はNG 鷹・甲斐を指導…捕手コーチが説くキャッチングの“極意”

キャッチャーコーチとして活動する緑川大陸さん【写真:伊藤賢汰】
キャッチャーコーチとして活動する緑川大陸さん【写真:伊藤賢汰】

キャッチャーコーチの緑川大陸氏は小学生からプロまでサポート

 肩書きはアマチュアでは珍しいキャッチャーコーチ。緑川大陸(みどりかわ・ひろむ)さんのキャッチング技術はプロからも認められている。小学生からプロまで幅広いカテゴリーの選手をサポートする中で、大切にしているポイントが2つある。キャッチングの知識や技術はアップデートされており、「ミットを動かさない」「ミットを止める」という一般的な指導方法は必ずしも正解ではないと考えている。

 現在32歳の緑川さんは関西高、立正大で捕手をしていた。甲子園出場経験はなく、大学でもレギュラーをつかめなかった。それでも、今はプロ野球選手も注目するキャッチャーコーチとして活動している。今年1月にはソフトバンク・甲斐拓也捕手から直々に自主トレでの指導依頼が届いた。

 プロ野球選手も知識や技術を吸収したいと熱望する理由は、緑川さんの豊富な知識とキャッチング技術にある。近年のメジャーリーグで捕手を評価する指標の1つとなっているフレーミングをはじめ、緑川さんはキャッチングを追求している。

 選手を指導する上で重点を置くポイントは2つある。1つ目は「投球を捕りにいかないこと」。投球は体の近くに来るまで待って捕球する。緑川さんは、こう話す。

「日本では『ミットを動かすな』『ミットを止めろ』とよく言われます。ただ、投球を止めるためには、捕手がミットの動きを止める必要はありません。捕球した時にミットが止まっているように見せるために、捕手は動いてタイミングを取る必要があります。重要なのはミットが流されない捕球です。できるだけ投球を体の近くまで引きつけ、ミットを動かして投球の軌道に入れるべきだと思っています」

キャッチャーコーチとして活動する緑川大陸さん【写真:伊藤賢汰】
キャッチャーコーチとして活動する緑川大陸さん【写真:伊藤賢汰】

意識するのは「審判目線」 ミットの捕球面を投手に見せる

 緑川さんは、ミットを止めて捕球するとミットが投球の勢いに押されてしまうと指摘する。投球の軌道にミットを入れる動きを取り入れることで、球の力に負けず、捕球した時にミットを止めやすくなるという。

 2つ目のポイントは、「捕球した時に球が投手に見えるようにすること」。捕球面を投手に見せるイメージだ。キャッチングでは、審判の目線でどのように見えているかが大切になる。緑川さんは「低めの投球を捕る時にミットの面が下を向くと、投球がボールに見えてしまいます。ミットの捕球面を投手に見せる意識を持っていると、ミットが垂れずに低めの投球がストライクに見えやすくなります」と説明する。

 捕手のプレーはスローイング、バント処理、タッチプレーなど多岐に渡るが、試合では捕球の回数が圧倒的に多い。ところが、キャッチングの指導を受ける機会は少ない。指導者に「ミットを止めろ」と指摘されても、選手はその理由や方法が分からない。上達のチャンスを失うだけではなく、捕手自体が嫌になる可能性もある。

 メジャーリーグではキャッチングの技術がストライクとボールの判定に大きく影響し、試合を左右するとも言われている。中でも、ミットや体の動きによってストライクとボールの境界線付近の投球を審判にストライクと判定させる技術「フレーミング」は重要視されている。捕手の基本となるキャッチング。その重要性が見直されている。

<プロフィール>
緑川大陸(みどりかわ・ひろむ)。1991年8月1日、愛知県名古屋市生まれ。小学3年生で野球を始め、関西高、立正大で硬式野球部に所属。高校で三塁手から捕手へ転向。野球ユーチューバー・クーニン率いる草野球チームで「ビタ止め捕手」として注目される。キャッチャーコーチとして、対面やオンラインで小学生からプロまで幅広く指導する。

(間淳 / Jun Aida)

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