保護者は「ゆっくりして」 グラウンドに姿なし…学童日本一チームの“練習改革”

「マクドナルド・トーナメント」初優勝を決めた新家スターズ【写真:加治屋友輝】
「マクドナルド・トーナメント」初優勝を決めた新家スターズ【写真:加治屋友輝】

大阪「新家スターズ」は今夏のマクドナルド杯で初優勝

 少年野球チームが直面する課題の1つに、選手と保護者の距離感がある。保護者が深く関わるチームもあれば、保護者の当番制などがないチームもある。今夏に日本一を達成した大阪の少年野球チーム「新家スターズ」の練習には保護者が一切いない。時代の変化に合わせたチーム運営と選手の自立を促す目的があるという。

 新家スターズは今夏、全国約1万チームの頂点を決める「高円宮賜杯第43回全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」で初優勝を成し遂げた。時代に合わせてチーム運営を少しずつ変え、3度目の出場で頂点に立った。新家スターズは土日祝日の活動に加えて、小学4年生の終わり頃から週3日、平日の夕方に全体練習をしている。練習グラウンドにいるのは指導者のみで、保護者は1人もいない。少年野球では一般的な保護者の当番は約10年前から一切ない。チームを率いる千代松剛史監督は「子どもたちはチームに預けて、保護者はゆっくりしてくださいというスタイルです」と話す。

 千代松監督は17年ほど前にチームのコーチを始め、その5年後に監督となった。当時は保護者が練習を見に来たりサポートしたりしていたが、「何か違う」と感じていた。保護者の協力なしに運営できない少年野球の在り方は時代に合っていないと違和感があったという。

「今は共働きが大半で、兄弟がいる家庭も多いです。仕事や家事、他の兄弟の用事もある中で、保護者に少年野球のサポートをお願いすることに疑問を感じました。少年野球チームの当番が大変で、子どもに野球をやらせられないという時代です。10年計画で少しずつチーム運営を変えていきました」

練習に参加しない保護者…子どもたちの自立促す狙いも

 低学年の保護者は心配で練習を見に来るケースもあるが、基本的に練習は指導者に任されている。試合は保護者がそれぞれ球場を訪れて、終了すると各自で帰宅する。練習参加の義務や送迎の当番などはない。保護者が練習に参加しない方針は、子どもたちを自立させる狙いもある。

 千代松監督は「保護者が近くにいる頃は、自然なことですが選手が親に甘える感覚がすごく見えました。小学生には早いと言われるかもしれませんが、独り立ちさせたいと思いました。ある程度のことは自分でやった方が将来的には子どもたちのためになると考えています」と語る。

 自分の身の回りのことはもちろん、選手たちは練習の準備なども大人の力を借りずに進めていく。千代松監督やコーチ陣の出番は、子どもたちが困ってアドバイスを求めてきた時のみ。今では小学5年生が戸惑っていると、6年生が教える流れができている。

 子どもに手を貸すだけが大人の役割ではない。近すぎる距離感は、時に子どもの成長を妨げる可能性もある。

(間淳 / Jun Aida)

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