完全試合から生まれた“好循環” 日本一の原動力となった「遊び感覚」で得た技術

石川の少年野球チーム「中条ブルーインパルス」【写真:加治屋友輝】
石川の少年野球チーム「中条ブルーインパルス」【写真:加治屋友輝】

敗因は大半がエラー…低学年は時間、高学年は質を意識

 全国制覇に近道はない。昨夏、“小学生の甲子園”と呼ばれる高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会「マクドナルド・トーナメント」で優勝した石川県の「中条ブルーインパルス」はキャッチボールを重視している。First-Pitchでは、小・中学世代で日本一を成し遂げた12人の監督に取材。倉知幸生監督によると、キャッチボールを大切にした投手が優勝の原動力になったという。

 倉知監督は、今年でチームを指揮して12年が経つ。マクドナルド杯に4度出場し、昨年は頂点に立った。怒声罵声の指導をやめ、監督やコーチがサインを出さないノーサイン野球を取り入れるなど指導方針を転換する中、ずっと変わらずに大事にしてきたのがキャッチボールだ。

「試合で負ける時は大半がエラーです。子どもたちには、ミスを防ぐためにキャッチボールが大切と伝えています。小学校低学年は時間をかけて、高学年は質を意識しています」

 ボールを投げる選手は基本通り、相手の胸を狙う。捕る方は捕球が難しいボールが来ると想定して相手のミスをカバーできるようにする。距離は塁間で、基本的に遠投はしない。倉知監督は「試合で最も機会が多い塁間の送球と、それよりも少し遠い距離の正確性を高めることでミスを減らせると考えています。低くワンバウンドで投げる練習をすることはありますが、遠い距離を無理やり投げる練習は小学生に必要ないと思っています」と説明する。

キャッチボールで磨いた制球力…球数制限内で完投

 キャッチボールには遊びの要素も取り入れる。強く投げるだけではなく、緩いボールを相手の胸に向かって投げる練習もする。キャッチボールを大事にする選手として倉知監督が名前を挙げたのが、昨年のチームで主将を務めたエースの服部成投手だった。制球力を武器にチームをけん引。3回戦では完全試合を達成している。この試合に要した球数は6回でわずか53球だった。

「緩い球も使っていこうと話をしていました。完全試合をしたことで、次戦以降の相手が四球を出さない投手というイメージを持ち、どんどんスイングしてきました。結果的に球数が少なく済む好循環が生まれました」

 服部投手は準決勝で完投、決勝は完封と球数制限の70球に達することなく6回を投げ切った。倉知監督は「日頃のキャッチボールで力の強弱をつけてコントロールしたり、山なりの球を狙ったところに制球したりして感覚をつかんでいたと思います」と話した。

 少年野球にも球数制限が導入され、コントロールの重要性は高まっている。トーナメントを勝ち上がるには、いかに1試合の球数を減らすか、さらに複数人の投手が求められる。中条ブルーインパルスでは全ての選手が投手の練習をして、少なくとも4~5人を公式戦で起用するチームづくりを進めている。制球力を欠けば、指揮官は計算を立てづらい。だからこそ、基本となるキャッチボールにこだわっている。倉知監督は今月25日から5夜連続で行われる「日本一の指導者サミット」に参加予定。そのチーム作りは多くの指導者の参考になるはずだ。

昨年学童で日本一、中条ブルーインパルス・倉知幸生監督も“参戦決定”!

 Full-Countと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では9月25日から5夜連続(午後8時から)でオンラインイベント「日本一の指導者サミット」を開催する。小・中学生の野球カテゴリーで全国優勝経験を持つチームから、手腕に定評のある12人の監督がYouTubeライブに登場。指導論や選手育成術、円滑なチーム運営のヒントを授ける。詳細は以下のページまで。

【日本一の指導者サミット・詳細】
https://first-pitch.jp/article/news/20230902/5374/

【参加はTURNING POINTの無料登録から】
https://id.creative2.co.jp/entry

(間淳 / Jun Aida)

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