少年野球の“投球時の応援”はOK? 威嚇に見えるケースも…審判でも異なる「解釈」

応援を停止した長崎・波佐見鴻ノ巣少年野球クラブの父母会【写真:編集部】
応援を停止した長崎・波佐見鴻ノ巣少年野球クラブの父母会【写真:編集部】

少年軟式野球の応援とマナー…投手がセットに入ると音を発しない応援席も

 攻撃側のベンチやベースコーチから「走った!」「ゴー!」などと叫んで投手を惑わせ、あわよくばボークや暴投を誘う。かつての学生野球では当たり前にあった、これらの投球時の声が、現在はまったく聞かれなくなっている。

「投手がセットポジションに入ったら、静かにしてください!」

 一方で、小学生の軟式野球では、審判がそのような注意を発するケースが出てきている。矛先は攻撃側のベンチ、または応援席だ。

 去る9月17日、埼玉県の東松山市民球場で開催された、5年生以下の新チームによる県大会の準決勝、決勝もそうだった。試合中に塁審からベンチ横の応援席へ注意があってからは、投手の1投ごとに球場が静寂に包まれた。コロナ禍に戻ったかのように、打球音や捕球音がフィールドに響く。

 日本一チームを決する8月の全日本学童大会「マクドナルド・トーナメント」では、応援についての注意や規制は特に見聞きしなかった。高校野球の甲子園アルプス席と同じように、音楽に合わせての手拍子や掛け声や振り付けで打者を応援する光景も多々あった。中には大の大人たちが、守っている小学生を威嚇するかのように、ダミ声で次々と吠えるような一団も散見されたが……。

 そうした中で、投手がセットに入ると一切の音を停止する応援席があった。長崎県から6年ぶり4回目の全国出場で、ベスト8まで進出した「波佐見鴻ノ巣少年野球クラブ」だ。父母会の宮崎正和会長は、応援スタイルの意図をこのように語った。

「攻撃中は選手が打席に入るまでは急いで懸命に応援して、あとは子どもたちにプレーに集中してもらおう、ということです」

「動揺を誘う声を発しない」の解釈は地域や審判次第

 今年は千葉県予選でもそういう取り組みが徹底されたが、長崎県でも同様の応援マナーが当たり前になってきたという。

「結局はマナーとかモラルの問題ですよね。県大会だからやらない、全国大会は禁止されてないからやる、とかそういうことではなくて。賛否もあると思いますけど、ウチはとにかく、ピッチャーとバッターに目の前の勝負に集中してほしい、ということです」

 そう私見をクールに語ったのは、波佐見の村川和法監督だ。現在の応援スタイルはこの初夏からで、試合中に審判団から冒頭のような注意を受けたのがきっかけだという。

「練習を頑張ってきた子どもたちが懸命に戦っているのに、そんなこと(応援)で注意されたり、試合が止まるなんてイヤですもんね。応援マナーについては、父母会の皆さんにも厳しく言っています」

 今夏の全国大会や予選でも審判を務めた、全日本軟式野球連盟(JSBB)の東京都支部の1人に見解を聞いた。「応援を停止させる規則はないです。マナーやスポーツマンシップの問題ですね。JSBBの競技者必携(2023)には『投手が投球板に触れて投球位置についたら、投手の動揺を誘う声を発しない』とあります。その解釈を応援にも適用するかどうかは、地域にもよるでしょうし、現場の審判の裁量になると思います」。

 応援の仕方にもいろいろある。投球動作中の無音(応援停止)については、指導者や選手たちからも賛否の両論が聞かれる。

 万人が納得する方向性や結論が出ることはないだろう。だが、問われているのは、子どもを目の前にした大人たちのマナーやモラル、スポーツマンシップに違いない。

〇大久保克哉(おおくぼ・かつや)1971年生まれ、千葉県出身。東洋大卒業後に地方紙記者やフリーライターを経て、ベースボール・マガジン社の「週刊ベースボール」でロッテと大学野球を担当。小・中の軟式野球専門誌「ヒットエンドラン」、「ランニング・マガジン」で編集長。現在は野球用具メーカー、フィールドフォース社の「学童野球メディア」にて編集・執筆中。

(大久保克哉 / Katsuya Okubo)

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