勝てない理由を「環境」のせいにしない 限られた条件で日本一、中学軟式の名将2人の工夫力

イベントに出演した上一色中・西尾弘幸監督(左)と駿台学園中・西村晴樹監督【写真:伊藤賢汰】
イベントに出演した上一色中・西尾弘幸監督(左)と駿台学園中・西村晴樹監督【写真:伊藤賢汰】

外野ノックできないスペース 打撃練習重視で全国制覇

 練習環境のハンディはアイデアでカバーできる。野球専門メディア「Full-Count」と野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」の連動企画、「日本一の指導者サミット」が25日に開幕した。初日は中学軟式で全国制覇を成し遂げた2人の監督が登場。ともに東京の中学で練習場所に恵まれているとは言えない中、メニューの工夫で結果を残している。

 25日から5夜連続で開催される同イベントには、小、中学生のカテゴリーで日本一を果たした監督12人が出演する。初日には、上一色中の西尾弘幸監督と駿台学園中の西村晴樹監督が登場。両者とも、首都圏のチームに共通する練習環境の課題をクリアして、全国の頂点に立った。

上一色中・西尾弘幸監督【写真:伊藤賢汰】
上一色中・西尾弘幸監督【写真:伊藤賢汰】

 上一色中が平日に練習する校庭は、野球をするには十分な広さとは言えない。キャッチボールの距離は40メートル強が限界で、遠投はできない。外野手をつけたシートノックのスペースもない。限られたスペースで他の部活も活動しているため、フリー打撃をするのも難しい。西尾監督は首都圏の高校を視察するなどして、自分たちの環境に合った練習方法を模索したという。

「選手のどこを伸ばすのか、自分たちのチームならどんな練習ができるのかを考えることが大切だと思います。私たちのチーム環境なら打撃。守備練習をするには狭すぎますから」

 西尾監督は試行錯誤を重ね、現在はケージやネットを使って7か所の打撃スペースをつくっている。投手との真剣勝負、打撃マシン、ソフトボールを使ったティースタンドなど、それぞれの打席をローテーションで回し、選手の待ち時間ができないように工夫。打力を看板とするチームをつくりあげた。守備は塁間の送球を速く正確にする意識を徹底し、キャッチボールや内野ノックで精度を高めている。外野守備や中継プレーは、校庭より広い場所で練習できる週末に時間を割く。

駿台学園中・西村晴樹監督【写真:伊藤賢汰】
駿台学園中・西村晴樹監督【写真:伊藤賢汰】

週2~3回は柔道場、器械体操や走塁練習でチーム力アップ

 駿台学園中は週2~3回、グラウンドを使えないという。練習場所はマットを敷いた柔道場。ウォーミングアップでは器械体操を取り入れている。チームを率いる西村監督は「柔軟性、空間認知能力、バランス感覚などを養っています。自分の体を思い通りに動かせるかどうかは打撃でも投球でも大切です」と意図を説明する。例えば、肩甲骨や脇腹が柔らかくなって可動域が広がると球速アップが期待できるという。指揮官は「胸を張れると球速が出やすくなり、脇が固いと肘が下がってしまいます。ブリッジ歩行を見ると、選手の2、3年後が分かります」と語った。

 柔道場では走塁練習に重点を置く。リードの取り方や帰塁の仕方などを繰り返し、個々の選手が自分の距離感をつかむ。駿台学園中ではアウトカウントや戦術によって、リードの距離が変わるという。同じ東京のチームで対戦する機会もある西尾監督は「駿台学園中の選手はリードが大きいのに牽制で刺せません。走者を出すと大きなプレッシャーになります」と脅威に感じている。

 試合に勝てない原因に練習環境を挙げるチームは少なくない。日本一のチームは環境を言い訳にせず、与えられた条件で最大限の効果を出す工夫を凝らしている。

9月29日(金)まで、まだまだ申し込み受付中!

 Full-Countと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では9月26日から29日までの期間、午後8時からオンラインイベント「日本一の指導者サミット」を開催。最終日の29日まで参加申し込みは可能。

【日本一の指導者サミット・詳細】
https://first-pitch.jp/article/news/20230902/5374/

【参加はTURNING POINTの無料登録から】
https://id.creative2.co.jp/entry

(間淳 / Jun Aida)

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 球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。

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