日本一でも「何も変わらない」 翌日も“普段通り”…全国制覇は「自己満足の世界」

世田谷西リトルシニア・吉田昌弘監督、京葉ボーイズ・関口勝己監督、取手リトルシニア・石崎学監督(左から)【写真:伊藤賢汰、編集部】
世田谷西リトルシニア・吉田昌弘監督、京葉ボーイズ・関口勝己監督、取手リトルシニア・石崎学監督(左から)【写真:伊藤賢汰、編集部】

中学硬式野球で日本一経験…3人の指導者がイベント出演

 野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が29日、「日本一の指導者サミット」を開催した。小、中学生のカテゴリーでチームを日本一に導いた指導者を5夜連続で招くイベントの最終日は、1部で千葉・東都京葉ボーイズの関口勝己監督が選手に手本を見せる大切さを説明。2部は東京・世田谷西リトルシニアの吉田昌弘監督と茨城・取手リトルシニアの石崎学監督が出演し、「日本一になっても何も変わらない」現実を明かした。

 東都京葉ボーイズの関口監督は58歳の今も、打撃や守備の見本を選手に示しながらポイントを解説している。時にはヘッドスライディングを披露する時もある。知識や経験を積み重ねている段階の小、中学生は、言葉だけでは理解するのが難しいという考え方が根底にあるためだ。

「選手の動きと理想的な動きの違いを実際に示しながら説明すると、どこに課題があるのかわかりやすいはずです。仮に指導者自身が動けないとしても、選手がどんな打ち方や投げ方をしているのか示すことが大事だと思います」

 手本を見せるコンディションを維持するため、関口監督は毎日、自宅でストレッチや体幹の強化をしているという。週1、2回はジムでウエイトトレーニングやランニングをしたり、インナーマッスルを鍛えたりしている。選手と一緒に動くための努力を怠らない。

優勝しても「祝勝会を開くことはない」

 世田谷西リトルシニアの吉田監督と取手リトルシニアの石崎監督は、普段から交流がある。チームを5度の日本一に導いている石崎監督は、吉田監督から影響を受けた部分があるという。

「吉田監督から『日本一になっても何もないよ』と言われていました。日本一になるまでは何もないという意味がわかりませんでしたが、実際に日本一になったら何もありませんでした。自己満足の世界です。うちのチームが3年連続日本一なのは誰も知らない、うちしか知らないんです。3年前のことを他の人は覚えていません」

 全国制覇を11度成し遂げている吉田監督は、「優勝したチーム以外は、大会の記憶を消したいですから」と補足した。世田谷西リトルシニアでは優勝しても祝勝会を開くことはなく、翌日から普段通りに練習する。「本当に何もないんです。何もないから毎日の練習や選手と対峙することが大事というところに戻るのだと思います」と吉田監督。全国制覇を成し遂げたチームにしか見えない景色がある。

(間淳 / Jun Aida)

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