雰囲気の悪さは「大人の機嫌」 指導者が手本に…中学硬式日本一支えた“モテる力”

「関メディベースボール学院」の井戸伸年監督【写真:橋本健吾】
「関メディベースボール学院」の井戸伸年監督【写真:橋本健吾】

ヤング&ポニーリーグで日本一に輝いた関メディベースボール学院

 選手には「モテなさい」と伝えている。2つのリーグで全国制覇する快挙を成し遂げた兵庫の中学硬式野球チーム「関メディベースボール学院」(以下、関メディ)を率いる井戸伸年監督は、選手が発言や質問をしやすい環境づくりを心掛けている。コミュニケーション能力を伸ばす指導が、選手の能力を引き出すという。

 関メディは今年3月、ヤングリーグで日本一を成し遂げた。4月に転籍したポニーリーグでも全国制覇し、同じ年に異なるリーグで頂点に立った。チームを率いる井戸監督が指導の軸に据えるのはコミュニケーション能力。9月29日まで5夜連続で開催された「TURNING POINT」のイベント「日本一の指導者サミット」で、こう語った。

「指導者が説明すると、選手は理解していないのに『はい』と良い返事をしてしまいがちです。わからないと言える環境、質問しやすい環境をつくることを心掛けています。学校の勉強と同じで、理解しないと置いていかれてしまいます。これから年上の人と接する機会が増えるので、大人を怖いと感じるのではなく、対話できる選手にしていきたいと思っています」

 関メディの指導者たちは選手に質問して、話を理解しているか確認する。さらに、発言の機会を設けている。練習前の1分間スピーチも、その1つ。井戸監督は「その日の練習メニューに関して発言するものですが、考えを口に出すと脳に残るので、しっかり練習するようになります」と説明する。

指導者が積極的に声出し…手本を見せて選手を育成

 井戸監督がコミュニケーション能力を重視する理由は、自分をマネジメントする力がなければ出場機会を得られないと考えているからだ。試合に出るためには指導者の方針や戦略を理解し、チーム状況を把握する必要がある。指揮官は「何ができて、何ができないのか自分を知ることが大事です。チームメートの調子や怪我人などを把握して、どうすればベンチに入れるのか、自分をプレゼンする力が重要です」と話した。そして、選手たちには「モテなさい」と伝えているという。

「野球選手はファンの方がいるから成り立っています。一番のファンは家族ですが、保護者に『ちゃんと練習しなさい』と言われるのがよくあるパターンです。これは、どんな練習をしているのか、自分はどんな野球人生を送りたいのかを家族にうまく発信できていないからです。周りに応援される環境をつくるためにも、コミュニケーション能力は大切になってきます」

 選手のコミュニケーション能力を上げるため、チームでは指導者から積極的に声を出す意識を徹底している。井戸監督は「生まれたばかりの赤ちゃんは、周りの大人の言葉を聞いて覚えていきます。野球も一緒で、大人が状況に応じた声を出していくことで選手たちが覚えていきます。チームの雰囲気が悪い時は大人の機嫌が悪い時が多いですし、大人が成長すれば子どもも成長していきます」と語る。

 知識や経験が不足している選手に「声を出せ」「質問しろ」と言っても、ハードルが高い。指導者や保護者ら大人が手本を示し、環境をつくっていくことで選手のコミュニケーション能力は高まっていく。

(間淳 / Jun Aida)

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