チームづくりで重視するのは打撃か守備か… 日本一11度&全国3連覇の2監督の“共通点”

東京・世田谷西リトルシニアの吉田昌弘監督(左)と、茨城・取手リトルシニアの石崎学監督【写真:加治屋友輝、伊藤賢汰】
東京・世田谷西リトルシニアの吉田昌弘監督(左)と、茨城・取手リトルシニアの石崎学監督【写真:加治屋友輝、伊藤賢汰】

11度の日本一…世田谷西リトルシニアは打撃を中心に練習

 全国制覇を何度も成し遂げるチームの指導者は、攻撃と守備どちらを重視してチームをつくるのか。9月29日まで5夜連続で開催された野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のイベント「日本一の指導者サミット」に出演した中学硬式野球の名将2人は「短期的な選手の成長という点では打撃」と共通する考え方を持っていた。

 日本一の指導者サミットには、小、中学生のチームを率いて全国制覇を経験した12人の監督が日替わりで登場した。これまでに11度の日本一を達成している東京・世田谷西リトルシニアの吉田昌弘監督と、3連覇を含む5度の日本一を果たした茨城・取手リトルシニアの石崎学監督も出演。イベント参加者からの質問コーナーでは攻撃と守備、どちらに重点を置いてチームづくりをしているか問われた。

 吉田監督は「試合で勝つことだけを考えれば守備」と回答した。野球の勝敗は投手力が占める割合が高く、トーナメントの中学野球では投手を中心にした守備が安定していないチームが勝ち上がるのは難しいと考えている。ただ、短期的に選手が成長するのは打撃だという。

「練習で変わっていける部分が大きいのは、投球や守備よりも打撃です。簡単に言うと、あまり打てない選手が練習で打てるように変化できます。投手はすごく練習をしたからといって、数日後に変化する度合いは微々たるものです」

 吉田監督は投手力や守備力の大切さを十分に分かっている。ただ、選手が成長を感じられる部分が小さいため、あえて守備よりも打撃練習の割合を多くしている。上手くなっている実感があれば、選手は野球の楽しさを感じられるためだ。もちろん、守備の強化も怠らず「打撃だけ、守備だけを指導して選手みんなが上手くなって結果を残せるチームはないと思います」と語った。

全国3連覇の取手リトルシニア石崎監督「即効性があるのは打撃」

 取手リトルシニアの石崎監督は「投手力は絶対条件で、勝ち上がるほど攻撃も守備も全部必要だと感じています」と回答した。その上で、「即効性があるのは打撃。短距離やジャンプ力といった身体能力が多少低くても、人よりも少し上にいけるのは打撃だと思っています」と続けた。

 イベントでは効率良くチーム力を高める練習法に関する質問も出た。取手リトルシニアでは、1死一、二塁からのノックや打撃の練習が多いという。石崎監督は「打撃と走塁の練習に加えて、守備は捕って投げるだけではなく走者のスタートや打球の位置で判断が変わります。安打かアウトか微妙なハーフライナーが特に練習になります」と説明した。

 吉田監督は「守備は習うより慣れる方が良い」と考えており、試合形式の練習に重点を置いて判断力を磨いている。一方、打撃は感覚を含めた技術指導が大切で、その理由としてゴルフを例に出した。

「ゴルフのドライバーショットで右にいくクセがある人は、ずっと右に飛びます。そういう技術といえます。野球でも100回素振り、100回ティー打撃をしたら目指す形になるかといえば難しいと思います。打撃は習うことが大事だと考えています」。走攻守のいずれかが突出しているだけでは全国制覇の道は遠い。強豪チームの監督は意図を持って全てのレベルを高めている。

(間淳 / Jun Aida)

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