選手に伝える「監督に依存するな」 “近すぎる距離感”に懸念…中学日本一指揮官の思考

東海中央ボーイズ・竹脇賢二監督【写真:編集部】
東海中央ボーイズ・竹脇賢二監督【写真:編集部】

東海中央ボーイズは指導者20人超で選手約100人を指導

 指導者の数だけ考え方や方針がある。今年3月に開催された第53回日本少年野球春季全国大会で初優勝した愛知県の中学硬式野球チーム「東海中央ボーイズ」の竹脇賢二監督は、自身の指導方針が絶対とは考えていない。選手たちには「監督に依存するな」と伝えている。

 竹脇監督がチームを立ち上げてから11年目を迎えた東海中央ボーイズは今春、日本一を成し遂げた。メンバー2人からスタートしたチームは今、選手数が約100人まで増えた。鹿児島実業、新日鉄名古屋でプレーした竹脇監督のほかにも、プロ、社会人野球の経験者ら20人を超える指導者が選手たちをサポートしている。

 選手の育成には信頼関係が欠かせない。ただ、近すぎる距離感は選手のためにならないと竹脇監督は考えている。「選手には、監督に依存するなと伝えています」。その言葉の意図を語る。

「私は選手に好かれようと思って指導していません。1人の指導者に依存するのではなく、数多くいるコーチから良い部分や自分に合う部分を見つけることが成長につながると考えています。選手は様々な高校に進学し、いろいろな指導者と出会います。それに対応できるように、中学時代に免疫をつけてあげたいと考えています」

 複数の指導者がいる小、中学生のチームからは「指導者によって言っていることが違って選手が戸惑う」といった声が上がる時がある。全く理不尽な指導内容を除けば、一見違うようでも結果的に同じアドバイスをしているケースも多いと竹脇監督は指摘する。「野球は感覚の部分が大きいスポーツです。指導者によって伝え方やアプローチが違うだけで、実は同じ指導をしている場合もあります」。チームとして指導者間で基本となる方針を共有しておけば、選手を混乱させることはない。

選手との接し方を使い分け「高校での活躍がチームの価値」

 東海中央ボーイズの指導者は時に、厳しく選手と接する。それは、選手の目標をサポートすることを最優先しているためだ。

「選手たちの正直な気持ちを聞くと、『全国大会に出たい』『高校で甲子園に出たい』と上のレベルを目指す声ばかりです。それなら、指導者は甲子園で活躍できる選手を育成することが役割だと思います。選手に寄り添う時と厳しくする時、どちらも必要です。良かったことと悪かったことを明確に伝える意識を持っています」

 選手に寄り添ったり、積極的にコミュニケーションを図ったりするだけが指導ではない。必要以上に話をせずに考えさせたり、厳しく指摘したりする接し方が選手のためになる場面もある。竹脇監督は声をかける状況や選手のタイプ、学年全体の雰囲気などを考慮して、ベストな引き出しを開く。

「高校で活躍してもらうことが、このチームの価値でもあると選手に伝えています」。チームを離れる選手が少なく、競技人口が減少する中で所属選手が約100人まで増えた現状は、指導者と選手の距離感が今の東海中央ボーイズにはベストだと証明している。

(間淳 / Jun Aida)

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