指導者に求められる“トーク力” 経験の押しつけはNG…「両立」を実現する言葉選び

四国IL・香川の岡本克道コーチ【写真:喜岡桜】
四国IL・香川の岡本克道コーチ【写真:喜岡桜】

元ダイエー・岡本克道氏が独立リーグ名将から学んだ“話す力”

 言葉は使い方によって人の背中を押すこともできれば、やる気を削ぐナイフにもなる。ダイエーの中継ぎのエースとして2003年の日本一に貢献した岡本克道氏が、今季から14年ぶりに四国アイランドリーグplus・香川オリーブガイナーズのコーチに復帰。“話す力”を磨くことで、選手の力を引き出すことに注力したという。

 2006年の現役引退後、独立リーグ、DeNA、社会人野球でコーチを歴任したが、指導者の永遠のテーマともいえる「育成と勝利の両立」については「現役のとき以上に悩んでいます」と頭を抱えていた。だが、香川のコーチに初めて就任した2009年に「育成と勝利の両立」を見事にやってのけた人物と出会い、ヒントを得た。

 その人物とは2005年に愛媛マンダリンパイレーツ、2007年から2019年まで香川で采配を振るった西田真二氏(元広島、現セガサミー監督)だ。香川から11年連続で延べ25人(ドラフト指名23人、外国人2人)のドラフト指名選手を輩出。同時に5度のリーグ制覇、3度の独立リーグ日本一に導いた。

「西田さんってね、選手に教えている最中でもおちゃらけるんですよ。でもその中で良いことを言っているんです。怒っているんですけど、笑いを取るというか……。僕も選手にやる気を持たせるミーティングとか指導になるように意識はしているんですけど、できるときとできないときがあるんです。そいうときは西田さんに相談していましたね」

相手の心を想像し「もっと選手の気持ちになってやれ」

 選手にかける言葉の選び方次第で、成長を後押しできる。しかし、選手の力を最大限に引き出す言葉を選ぶためには、相手の心情を察することも必要だ。西田氏から指導された中で、岡本氏の胸に深く刻まれているのは「もっと選手の気持ちになってやれ」の一言だ。

「『お前自身のことはわかるだろう。だけどマウンドに立っとるピッチャーは違う子。この子の気持ちをわかってあげなさい。それができれば、マウンドでも良い言葉をかけてあげられるし、その子が冷静になれるような言葉もかけられるんじゃないか』と常に言われていました。言葉の勉強も、まだまだ僕には必要なことだと思います」

 今季は前期シーズン、後期シーズンどちらも最下位に沈んだ香川。西田氏が率いた“常勝ガイナーズ”の復活を目指し、岡本氏は“言葉”を大切にしながら、実力ある選手たちを躍動させる指導を続けていく。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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