公園遊びの制限で「むしろ危ない」 育成世代の“共通点”…体の一部が「めちゃ弱い」

Mac's Trainer Roomの高島誠氏【写真:伊藤賢汰】
Mac's Trainer Roomの高島誠氏【写真:伊藤賢汰】

プロを30人以上指導…高島誠トレーナーが懸念する子どもの食事

 冬のオフ期間はトレーニングを重ねて、来季に向けて技術・体力を向上させていく時期にもなる。そこで、どのような練習メニューを行うのかに着目してしまいがちだが、運動をする大前提として大切なのは、必要な「栄養素」をしっかり摂ることだ。Full-Countでは少年野球の現場を知る“凄腕コーチ”12人に取材。30人以上のプロ野球選手を指導してきたトレーナーの高島誠氏は、「朝ごはんを食べてこない子が多い」と懸念する。

 広島県東広島市内で「Macs Trainer Room」を経営する高島氏は、オリックス・山岡泰輔投手らプロ選手から小・中学生の育成年代まで幅広くサポート。2020年には中学硬式チーム「東広島ポニー」を立ち上げ、ラプソードなどの投球・打球分析機器のそろった自身の施設を活用し、個々の特性に合わせた指導を行っている。

 ただ、育成年代を見ていて感じることがある。「練習が早いからといって、朝ごはんを食べてこない子が多い」ということだ。

「野球は瞬発系のスポーツで、しかも“無差別級”。筋肉量がある選手ほど有利です。それなのに、朝ごはんを食べず、筋肉のもととなるタンパク源が足りていないため、筋肉量は増えていかないし身長も伸びない。体力がなかったり、すぐに怪我をしてしまったりするのは、そうした影響もあります」

 体を大きくするために「コメを食べなさい」は昔から“定番”の指導だが、お米は炭水化物(糖質+食物繊維)であり筋肉をつくる材料にはならない。むしろ、炭水化物が重要になるのは運動中だ。体を動かすエネルギー源となる糖質が不足すると、筋肉をアミノ酸に分解してエネルギーに変える「糖新生」が起こり、運動すればするほど筋肉量が落ちて怪我の元になる悪循環に陥る。

「朝は卵や魚、納豆などのタンパク源となるものを必ず食べることです。必要な栄養素さえ入っていれば“簡単レシピ”で構いません。そして、練習中は糖新生を起こさないために糖質を含んだドリンクなどを摂取することも大事です」

ウォームアップにパルクールを導入…動きのキャパシティを広げる

 育成年代を指導してもう1つ感じるのが、「上半身の力がめちゃくちゃ弱い」こと。「高校生に年間を通してウエートトレーニングをさせても、上半身については目標をクリアできない子が多い」という。

 ひと昔前であれば、ジャングルジムや雲梯などで、高いところによじ登ったりぶら下がったり、遊びの中で自然に上半身の力を獲得してきた。しかし、そうした遊びも危ないからと制限されてしまう時代だ。

「今の子たちは、赤ちゃんの時に“ハイハイ”をして以降、上半身を使う機会がほとんどない。落ちると危ないから『遊具をなくしましょう』と言いますけど、高いところに登れない子がスポーツをすることの方が、むしろ危なくはないでしょうか」

 野球は打つ・投げる・捕るなど、さまざまな動きが要求される。それだけ、基礎的な体力・運動能力がなければ怪我につながる。そこで、高島コーチが勧めるのが、東広島ポニーでもウォームアップとして取り入れている「パルクール」だ。

 街なかなどで自由に障害物によじ登ったり飛び越えたりする競技のイメージがあるが、まずは基礎として、レールの上をバランスをとって歩くなど、“落ちても安全”な方法から運動に必要な動きを獲得していく。「大人がやると、選手たちは『大人だからできるんだろう』という顔をするので(笑)、同じ中学生のパルクール選手を指導者に迎えてチームでは行っています」と語る。

「野球をするには、いろいろな動きができるだけのキャパシティを持っていないと、しんどいですから」。そう語る高島氏は、今月27日から5夜連続で行われる「大人のための少年野球塾」にも参加予定。選手個々に合った能力を引き出す指導法の一端を披露してくれる。

オリックス・山岡らを指導…高島誠コーチも“参戦決定”!

 Full-Countと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、11月27日から5夜連続でオンラインイベント「凄腕コーチ12人が技術指導 大人のための少年野球塾2023 〜子どもを伸ばすための集中講座〜」を開催。小・中学生の現場で豊富な実績を持つ指導者や、話題の野球塾コーチ・トレーナー12人が出演し、オンライン配信で、選手たちを成長へ導くドリルやトレーニングを実技解説する。詳細は以下のページまで。

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(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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