人気野球チームが“夏休み”に活動しない? なぜか増幅する「やる気」…得た絶大効果

2017年に設立された学童軟式野球チーム「東京バンバータJr.」【写真:片倉尚文】
2017年に設立された学童軟式野球チーム「東京バンバータJr.」【写真:片倉尚文】

「東京バンバータJr.」は8月と12月・1月を原則オフにしている

 2017年に設立された学童軟式野球チーム「東京バンバータJr.」は、野球人口が減少している中で部員数が増えている注目のチームだが、「練習時間が少ない」のが特徴の1つ。活動するのは土日のみで、祝日は原則休み。しかも1回の練習時間は“半日”に限定している。それだけではない。8月は夏休み、12月、1月は冬休みとして活動はしない。その意図とは?

 夏休みの8月。野球チームなら精力的に活動するであろう1か月を、バンバータJr.は“休養”に充てる。今年で3年目になるという。その大きな理由が熱中症対策。「小学生年代でリスクを取る必要はないと思っています。後遺症の危険性もあります」とチームの代表を務める大越俊樹さんは語る。近年は記録的な猛暑続き。所属する世田谷区軟式野球連盟が8月に大会を開催しないこともあり、体調を崩すリスクを負ってまで野球をする必要はないという考えだ。

 今年はその代わりに1日だけレクリエーションイベントを行ったほか、高学年は合宿を開催した。イベントではブルーシートに水を撒いてスライディング練習を実施。子どもたちは喜々として取り組んだ。過去にはホームラン競争などの「ベースボールフェスタ」やプロ野球観戦ツアーなどを開催したという。

 12月、1月も練習は行わない。12月は体力測定会やボウリング大会、納会(ビンゴ大会)を実施。今年の1月は高学年を対象に、チームビルディングの一環としてワークショップや成人チーム、U-15硬式・軟式チームの“バンバータファミリー”で運動会を開催した。

「家族と過ごす時間も大事です」と大越さん。ステージが上がっていけば旅行など家族で過ごす時間も少なくなるため、小学年代では夏休みを家族で有効活用してほしいという思いがある。新しいものは積極的に取り入れ、常にトライ&エラーや試行錯誤を繰り返しながらチームを運営している。

チームの代表を務める大越俊樹さん【写真:片倉尚文】
チームの代表を務める大越俊樹さん【写真:片倉尚文】

子どもの「もっとやりたい」気持ちを高める“腹八分目”

 保護者当番を実施しないのも、負担軽減が目的。子どもが野球をすることによって、他の家族の負担になってほしくないという思いがある。長期休みを設けることで、自主練習など自分で考える時間が生まれ、子どもたちの野球へのモチベーションも高まる。「子どもたちが前のめりの状態で練習を再開できるので、気持ちいいですね」と大越さんはその効果を語る。

「もっとやりたい」と子どもたちが思うことで、平日の過ごし方や次の練習へのやる気も変わり、上達も早くなる。「腹八分目で終わるのがいいと思っています」とも強調する。

 指導者としては「いかに子どもを夢中にさせるか」を考え、“答え”を与えないようにしている。「子どもなりに考えることも大事で、大人が答えを言ってしまうと考えなくなってしまいます。経験則で物事を言ってしまわないように、我慢して答えを言わない指導を心掛けています」。

 導いてあげるコーチングテクニックは難しく、指導者も学ぶ姿勢を忘れないようにしている。スタッフは基本的に全日本軟式野球連盟もしくは全日本野球協会の公認野球指導者資格を取得。常に情報をアップデートしている。バンバータJr.は様々な手法で、選手のやる気を引き出している。

(片倉尚文 / Naofumi Katakura)

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