小中学生に高まる米国野球留学熱 目標次第では“不利”も…重要な親子での「見極め」

花巻東高・佐々木麟太郎の進学で「米国野球留学」へ注目が集まっている【写真提供:株式会社GXA】
花巻東高・佐々木麟太郎の進学で「米国野球留学」へ注目が集まっている【写真提供:株式会社GXA】

親元を離れて過ごす貴重な体験…「短期間でも大きく成長する子は多い」

 高校通算140本塁打の花巻東高・佐々木麟太郎内野手が、プロ入りでも大学進学でもなく、米国への野球留学を選んだことが話題になった。佐々木選手と同様に、高校からの野球留学の希望者は増えているそうだが、小・中学生向けの「短期野球留学」なども人気があり、関心を寄せる保護者も少なくない。

 そこで、野球教室・セミナーの開催と共にスポーツ留学を希望する選手たちへのサポートも行う「株式会社GXA」のカウンセラー、平林豊さんに、小・中学生向けの米国野球留学事情について聞いてみた。

「まず小学生や中学生の場合、短期留学を体験することをお勧めしています」と平林さん。小学生や中学生が参加する短期留学は、現地チームとの合同練習のほか、メジャーリーグ試合観戦など楽しいアクティビティもある。またホームステイを通じて、異国の生活にも触れることができる。

 1週間という短い期間でも、日本から離れてホームステイや野球をする体験を経て、「米国で野球をやりたい!」となる子もいるし、帰国してから懸命に英語を勉強するようになった子もいると言う。

「野球だけでなく、他人の家に寝泊まりすることで、洗濯を教わりながら自分でしたり、何かをしてもらって感謝の言葉を伝えたり、子どもなりにいろいろ考えます。たとえ英語がカタコトでも、伝える意思を持たないとコミュニケーションがとれません。そうした実体験から短期間でも大きく成長する子は多いです」

 英語は話せないかもしれないが、短期間でも新しい環境に慣れようと前向きに取り組む子や、ホストファミリーとコミュニケーションをとろうと試行錯誤する子は、長期留学にも対応しやすい。

まずは「春休み・夏休み・冬休み」を利用した“短期留学”で体験を

 また、平林さんによれば、野球においても「これまでにない体験ができる」そうだ。

 日本の少年野球とは違った練習や雰囲気に驚きつつ、一緒にプレーをすることで交流が生まれ、友人もできる。MLBの試合観戦では、メジャーリーガーのプレーや美しい球場に見入って、興奮し憧れをふくらます子も多い。「短期留学はいわば入門編。良い体験となり、また行ってみたい、やってみたいという気持ちを持った子は、高校や大学の野球留学を検討するとよいのではないでしょうか」。

 ただし、高校での長期留学については意外にも「野球中心の生活をしたいのなら、圧倒的に練習量が多い日本の方が向いています。甲子園という夢のある目標も持てます」と平林さんは答えた。

「現地の高校ではチームの作り方からして日本と違います。先発ピッチャーの数は多く、完投もさせないですし、成長過程にある身体の負担を第一に考えて練習も行います。通年で野球ができるアカデミーの留学コースもありますが、基本的に米国の高校野球はトップレベルの大学野球を目指すものです」

 つまり、米国の大学野球を目指すなら、高校からの野球留学は有力な選択肢になる。入学基準となる単位などもクリアできるし、なにより飛躍的に英語力がアップする。高校3年間を米国で過ごし、学校に通い勉強や野球に打ち込めば、大学入学の頃には問題なく英語で生活ができる。

「ただし、米国の高校を出て日本の大学野球をやるのはかなり不利です。日本の大学は甲子園に出たとか、地方大会でどれくらいの活躍をしたかが大きく、米国における野球活動はほとんど評価されません。こうしたことも踏まえて親子で話し合う必要がありますね」

 だからこそ、まずは中学生向けの短期留学を体験してみるのがベストだ。英語のレッスンのほか、フィジカルトレーニングやプロ・コーチのレッスン、現地チームとの親善試合なども組み込まれており、そこで、どれだけ本人の意思が固まるか、あるいはどう変化するか、親子で見極めていく機会になる。

 何事も体験してみて初めてわかることが多い。百聞は一見にしかず。まずは春休みや夏休み、冬休みを利用したキャンプや短期留学を検討してみてはどうだろうか。

(大橋礼 / Rei Ohashi)

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