子どもの身長、どこまで“伸ばせる”? 悩める親へ…人生1度の絶好機「逃さないで」

子どもの体の成長度合いは個人差が大きく適切な指導・声がけが必要だ【写真:荒川祐史】
子どもの体の成長度合いは個人差が大きく適切な指導・声がけが必要だ【写真:荒川祐史】

どれくらい背が高くなるかは「個人差が大きい」が…“速さ”でコントロールの余地あり

 少年野球の保護者にとって、子どもの技術の上達ぶりに加えて気になることは「自分の子は、どれくらい背が大きくなるんだろう?」ということではないだろうか。父親も母親もそこそこの身の丈があるのに、「思ったほど身長が伸びてこない……」と我が子を心配になる人もいるかもしれない。

 そんな“悩み”を持つ保護者に向けて、子どもの発育・発達に関する研究を行う東京農業大学応用生物科学部教授の勝亦陽一先生がアドバイス。「“タイミング”を見逃さず、栄養・休養をしっかりとるようにしてください」と語る。

 そもそも、子どもの体の成長度合いには個人差が大きいことを、まずは認識しなければいけない。「成長の“はやさ”には、身長が急増する時期が早く来るか、おそく来るかという“早さ(早晩熟)”と、1年間でどれだけ身長が伸びるかなど、単位時間あたりの成長量を示す“速さ(遅速)”とがあります。まずは、これらを分けて考えなければいけません」と勝亦先生は言う。

“早さ”で1番わかりやすいのは「生まれ月」だろう。日本の場合は4月2日生まれが最も早く、翌年の4月1日生まれが最もおそいが、一般的には誕生日が早いほど身長が伸びる時期も早期にやってくる。4~6月生まれの小学生が、同じクラスの早生まれの子よりも体が大きいのがその例だ。

 もう1つの“早さ”は、身長が急増する時期だ。早い子は小学校4~6年生の時期に来るし、おそい子は高校生や大学生になって伸びるケースもある。また、伸び始めてから“いつ止まるか”も個人差は大きい。急激に伸びてピタっと止まる子もいれば、長い期間をかけて徐々に伸びていく子もいる。

「大抵は20歳には成長が止まっていますが、稀に23、24歳まで伸びる人もいます。いつその時期が来るか、どれくらいまで伸びるのかは予測するのは難しい。基本的には遺伝的要因が大きいと言われていますが、両親で傾向が違う場合もありますし、身長と遺伝子に関してもわからないことが多いのが現状です。保護者は“自分はこうだったのに”と決めつけはしない方がいいでしょう」

子どもの発育・発達に関する研究を行う東京農業大学の勝亦陽一教授【写真:本人提供】
子どもの発育・発達に関する研究を行う東京農業大学の勝亦陽一教授【写真:本人提供】

環境要因も影響する“速さ”…ピーク突入時に「しっかり栄養を」

 生まれ月や成長する時期は、コントロールすることは難しい。しかし、単位時間あたりの成長量である“速さ”については、実はコントロールの余地がある。遺伝的要素に加えて、運動、栄養、休養(睡眠)などの環境要因の影響を受けるからだ。ここに、選手や保護者へアドバイスできることがある。

「まず、定期的に身長を測り、急激に背が伸びる時期を逃さないことです」と勝亦先生。学校での測定は1年に1回のため、勧めるのは3か月おき。すると、それまで1センチずつだったのが一気に3センチずつになるなど急激に伸びる時期がやってくる。そこが“ピーク突入”のタイミングだ。

 この時期に入ったら、とにかく栄養をしっかりとること。3食好き嫌いなくバランスよく、量もしっかりと食べる。これが身長を増加させることにつながる。そのためには“準備”も必要だ。

「食事量は急には増やせません。成長期に入ってからいきなりたくさん食べようとしても、すべてを吸収できませんし、消化不良を起こしてしまいます。ピークが来ると思われる前から少しずつ食べる量を増やしていきましょう。食事回数を多くして、トータルの食事量を増やすこともお勧めです」

 そして、栄養と共に大切なのが休養だ。身長は眠っている間に伸びるため、良い睡眠をたっぷりととれるかが鍵となる。寝る前にストレッチをする、ベッドに入ってスマホを見ないなど、睡眠の質を高める習慣も身につけておく必要がある。

疲れすぎていると体の成長を妨げるリスクも

 逆に体が疲れすぎていると、睡眠中、体の回復にエネルギーが多く使われ、身長増加を妨げてしまうリスクがある。ここには監督・コーチの指導も関わってくる。

「特に中学生の場合は、同じ練習をしていても、成長段階の選手には練習量が多すぎて、成長期を終えた選手には少ない、ということが起こります。チームスポーツの難しさはありますが、成長段階の子にはエネルギーをたくさん消費するメニューよりも柔軟体操がお勧め。逆に成長期を終えた子には、柔軟性を維持しつつパワーを上げていく練習がお勧めです。全体練習の時間を短くして、個人練習の時間を増やす指導も必要ではないでしょうか」

 いずれにせよ、身長が伸びる“成長のピーク”は人生に1度きりしかやってこない。しっかり食べて、しっかり寝る。そのための準備と心構えを保護者も、指導者も怠らないようにし、選手に適切な声がけができるようにしておきたい。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

少年野球指導の「今」を知りたい 指導者や保護者に役立つ情報は「First-Pitch」へ

 球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。

■「First-Pitch」のURLはこちら
https://first-pitch.jp/

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY