制球難克服→161キロ“覚醒”のワケ 守護神候補が反省する1年目「失敗も全て経験」
楽天の剛腕、清宮虎多朗が語る体づくりと「数字とのすり合わせ」の重要性
“160キロ超え”を遂げた要因には、1年目に味わった“失敗”からの学びがあった。今月上旬に東京・西東京市の早大・安部球場で開催された、西東京市、小平市、東久留米市の少年野球チームを対象とした「GRAFARE(グラファーレ)ジュニア野球教室」(タクトホーム株式会社主催)に、楽天の育成5年目右腕、清宮虎多朗投手が講師の1人として参加。「失敗を恐れずに、いろいろなことにチャレンジしてほしい」と子どもたちにメッセージを送った。
190センチの長身から投じられる剛速球に、野球少年たちから大歓声が上がった。“軽め”のデモンストレーションにもかかわらず、ボールを受けた横山徹也さん(楽天ブルペン捕手)は「145キロくらい(出ている)」と驚嘆。メイン講師を務めた館山昌平さん(元ヤクルト)も、「大谷(翔平)投手を除けば、ロッテの佐々木朗希投手に次いで170キロに近い」と語り、会場を沸かせた。
2018年の育成ドラフト1位入団。5年目の今季は2軍で39試合に登板し22セーブを挙げ、最多セーブのタイトルを獲得した。平均151キロのストレート主体の投球スタイルで、シーズン中に自己最速161キロをマーク。千葉・八千代松陰高時代は最速145キロだっただけに、5年間で16キロも球速アップした計算だ。
スピード向上の要因を尋ねると、「いろいろ要素はありますが、一番は体づくりですね」。体重はプロ入り後から比べて20キロほど増量しており、「しっかり食べてトレーニングをすることは大事。振り返ると、そこが大きいと思います」と言う。
そしてもう1つ、プロ1年目に味わった“失敗”も糧になっている。2019年は極度の制球難に陥り、2軍戦での登板なく終わった。元々、バスケットボールや“田舎遊び”で鍛えた身体能力の高さはあったが、「感覚に頼ってやっていた部分があった」と反省する。
「今の時代はデータを取れる機器がありますし、数字を確認しながら修正していく方法はいくらでもあります。数字と擦り合わせつつ、自分の体と向き合いながら最初から行けたらベストだったかなと思います」
必ずしも成功だけが次につながるわけではない
翌年から2年間投手コーチを務めた館山さんからは、ボールの回転効率など理論的な部分を学び、大きな財産を得た。2021年の右肘のトミー・ジョン手術とリハビリを経て、制球力も向上した今季は2軍の守護神に。支配下昇格、さらには1軍デビューも見えてきている。「9回に限らず、6回、7回でも1軍の優勝につながるピッチングをする」ことが来季の目標だ。
「失敗も全て経験。必ずしも、成功だけが次につながるわけではありません。そこから学ぶこともあるので、失敗を恐れずに、いろいろなことにチャレンジしてほしいですね」と子どもたちにアドバイス。失敗も成功も、小さな積み重ねがレベルアップにつながる。筋骨隆々の長身右腕の、野球少年たちに夢を与えるピッチングに注目したい。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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