時間は土日だけ…制限あるのに全国出場 「選手もボールも動く」“超効率”練習術

埼玉・吉川市の学童野球チーム「吉川ウイングス」の走塁練習の様子【写真:間淳】
埼玉・吉川市の学童野球チーム「吉川ウイングス」の走塁練習の様子【写真:間淳】

2021年にマクドナルド杯2度目の出場…埼玉・吉川ウイングスの実戦的な走塁練習

 時間と場所を有効活用した練習が、選手の成長につながっている。埼玉・吉川市で活動する学童野球チーム「吉川ウイングス」は、2021年に「高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」に2度目の出場を果たした。限られた時間を有効活用するため、ウオーミングアップに実戦的な走塁練習を取り入れるなど、1つのメニューでより多くの効果を生む工夫を凝らしている。

 吉川ウイングスの練習は土日に限られる。地元の公園に隣接するグラウンドは、野球をする場所としては決して広いとは言えない。それでも、練習メニューを工夫して結果を残している。チームを率いる岡崎真二監督は「1つのメニューに様々な要素を取り入れるように心掛けています。それから、できるだけ選手とボールが動いている状況をつくるように意識しています」と説明する。

 例えば、ウオーミングアップでは単純なランニングやダッシュをするのではなく、試合を意識した走塁練習を取り入れる。一塁走者としてリードを取って盗塁のスタートを切るメニューや、プラスチックの球を打って一塁まで全力で駆け抜けるメニュー。さらに、一塁走者が安打で三塁を狙う走塁や、1死三塁の内野ゴロでホームインする走塁などを練習する。

 低学年の指導を担当する安保大地コーチは、「得点が入りやすい1死三塁の走塁を特に意識しています。前進守備の内野手を見て、ゴロゴーなのか一塁に送球したタイミングで本塁へスタートを切るのか、試合で慌てないように普段の練習で繰り返しています」と話す。

 吉川ウイングスの練習では、「可視化」もキーワードになっている。二塁打や三塁打を放った時に大切になるベースランニングでは、スピードを落とさずに走れるように塁間に目印を置く。チームには園児や小学校1、2年生の初心者もいるため、口頭で説明するだけでは理解できない部分があるためだ。投球練習では、マウンドからホームベースの両端へ2本の白い直線を引く。ストライクゾーンを視覚で捉えることに加えて、投球の軌道をイメージする狙いがある。

初心者にも理解しやすいようにマーカーコーンを置いての練習も行う【写真:間淳】
初心者にも理解しやすいようにマーカーコーンを置いての練習も行う【写真:間淳】

プロ野球キャンプの情報も参考…低学年から「状況判断」を少しずつ

 吉川ウイングスは、全国大会に出るチームでは一般的な平日練習をしていない。体力や怪我のリスクを考慮して、小学1年生以下や初心者は午前中のみの練習としている。

 限られた時間で知識や技術を効率良く習得するため、岡崎監督はプロ野球のキャンプをはじめ幅広く集めた情報を参考にし、選手たちの反応を見て課題克服に向けたメニューを考えている。「高学年になった時に戦術や戦略をスムーズに理解できるように、低学年のうちから状況に応じた動きを少しずつ覚えていける練習を心掛けています」。

 練習環境に恵まれたチームをうらやむより、与えられた条件で最善の方法を模索する。そうした指導が選手たちの成長につながっていく。

(間淳 / Jun Aida)

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