選手起用の“不満”はどう解消? 「なぜウチの子は」はNG…大切な指導者への尋ね方

我が子の起用法にモヤモヤする保護者の質問に現役3監督が回答(写真はイメージ)
我が子の起用法にモヤモヤする保護者の質問に現役3監督が回答(写真はイメージ)

我が子が常にベンチ…成長へつなげる“助言”の求め方に現役3監督が回答

 少年野球チームでわが子が試合に出られないことが続くと、保護者としては「なぜ?」と思うことがある。選手の起用法について疑問を感じるものの、「監督に話をしていいのか」「話すとしても、どう話したらいいのか」と、モヤモヤを抱えた経験を持つ野球ママも、少なくないのではないだろうか。

 そんな親たちの悩みに応えるべく、少年野球チームの監督たちに質問。それぞれに回答を寄せてくれた。

 2023年度、ヤングとポニーの2リーグで日本一に輝いた、兵庫県・関メディベースボール学院の井戸伸年総監督は、「指導者に『うちの子に足りていない部分は何ですか?』とアドバイスを求める形で相談するのがいいと思います」と答えてくれた。選手の成長も、足りない部分も把握している、それが指導者だという考えが根本にある。

 全国大会35回の出場を誇る、福島県いわき市・常磐軟式野球スポーツ少年団の天井正之監督もまた、モヤモヤしているよりは、率直に「指導者に聞いたほうがいいと思います」と語る。天井監督は起用法や采配について、常に説明できるように心がけているという。競争である以上、学年が下の子が試合に出ることは当然あるが、みんなが納得できるように説明を行うことで保護者との信頼関係を築いていく。

 2021年、2022年と2年連続日本一の実績を持つ、青森山田リトルシニアの中條純監督は「子どもたち自身が聞く方がいいと思います」と語る。「例えば『僕は何が劣っていて、どうしたら試合に出してもらえますか?』と聞いてくれたら、こちらも明確に説明する。私は選手に『どんどん聞きに来なさい』と言っています」。

 スポーツの世界では、上のレベルにいけばいくほど、結果が重視される。中條監督は子どもたちが相談に来ると「努力やプロセスは評価をするし、チャンスは与える。けれども、そこから試合に出続けられるかどうかは、結果を出すこと」と話すそうだ。チームの方針をきちんと子どもたちに伝えれば、メンバーに選ばれても、あるいは選ばれない時も納得し、もっと頑張ろうという前向きな意欲につながる。

他の子を引き合いに出すのは「選手のためにならない」

 3監督とも少しずつ内容は違うが、「起用法や采配に疑問や不満があれば、指導者に話すべき」ということは共通している。

 要は「聞き方」である。親が聞くにしても子どもが聞くにしても、「助言を求めている」ことを理解してもらえるように話すことが大切だ。

 中條監督は「親が他の子を引き合いに出して、『なぜウチの子は』という聞き方は、選手のためにもなりません。選手のモチベーションにつながるような助言の求め方がいいと思います」と語る。井戸総監督もまた、「親が子どもを過大評価して選手起用に関して意見を言うのは、指導者を困らせるだけです」と話す。

 また、井戸総監督は「どういうチーム方針で、それがわが子に合っているか、保護者も納得しているか」が重要であることも指摘している。例えば、常に勝利を第一に全国大会を目指すチームと、地域の仲間で楽しく野球をやろうというチームとでは、選手の起用法も違う。どちらが良い悪いではなく、子どもと親の希望が一致し、チームカラーと合っていれば、たとえ疑問が生まれても大きな障壁となる可能性は低い。

指導者と考え方が合わなければチームを変える選択肢もある

 3監督からの回答をまとめると、次のようになる。

1、保護者が聞く場合は“助言を求める”スタンスが大切
 親が監督・コーチに聞く場合、単に「なぜ試合に出してくれないのか」の問いは曖昧で、不満をぶつけていると相手に受け取られてしまう可能性がある。「子どもが試合に出られるように改善できる点はないか、どんなところをもっと練習したらいいのか」と聞けば、具体的なアドバイスをもらいやすい。“助言を求める”スタンスで相談するのがポイントだ。

2、子ども自身が聞く場合は「どこを直したら(あるいは頑張ったら)試合に出られますか」と聞く
 子ども自身が不満に感じているようなら、保護者が話を聞いてあげて、内容を整理してあげながら「次の練習で監督に『相談があります』と話してみたら?」と提案してみる。親や学校の先生以外の“おとな”と話し合う経験自体が、子どもにとって成長のステップにもなる。

 監督・コーチとコミュニケーションをとることは大切である。一部の選手だけが優遇されていると感じていた保護者が、監督の考えを聞き「納得した」というケースもある。また逆に、そこで指導陣の考え方と根本的に合わないとわかり、思い切ってチームを変えたというケースも実際にある。

 いいチームの指導者であれば、指導の理念やチームの方針を明確に示し、保護者や子どもの声に耳を傾けてくれるはずだ。思い切って話をしてみたら、解決の糸口は見えてくるかもしれない。

 子どもたちの成長を願う気持ちは、親も指導者も同じだ。

(大橋礼 / Rei Ohashi)

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