海岸走り、橋下で雨宿り…苦節経て完成 待望の室内練習場を“みんなに開放”するワケ
一般の個人・団体も利用可能…室内練習場作った徳島インディゴソックスの「使命感」
昨年のドラフト会議で6選手が指名を受けた四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスが、昨年、徳島県徳島市内に室内練習場「Indigo Technical Factory」(インディゴ・テクニカルファクトリー)をオープンさせた。同時に、アカデミー事業にも着手。年間100回以上の野球教室を開くなど、少年野球界へ新しい風を吹き込んでいる。
既存の倉庫をリフォームした同施設は、アカデミーに在籍している子どもたちだけでなく、一般の団体・個人へも貸し出され、今オフにはNPBで活躍している同球団OBや、徳島県出身のオリックス・杉本裕太郎外野手らも利用した。バッティングレーンは最大6か所、ブルペンは3か所を確保でき、軟式球と硬式球に対応している打撃マシン4台と、投球・打球データ分析機器「ラプソード」を借りることもできる。
2015年から球団社長を務める南啓介氏は、オープンの経緯について「小学生、中学生、高校生も含めて、すぐに使える施設があったらいいのになと思って作りました」と明かす。県内には2015年にオープンした阿南市の室内練習場があるが、徳島市内からだとアクセスに車で1時間かかる事情もあった。
専用練習施設を持たない同球団は、コロナ禍で苦しめられた。「どこのグラウンドも封鎖になってしまって練習をする場所がなくなり、海岸を走るくらいしかできなくなりました。天気が悪い日は吉野川の河川敷へ移動して、橋の下で雨をしのいだり。ボールを使った練習ができなくなったんです」。それは同県内で野球をしている子どもたちにとっても同じだった。日増しに使命感は強くなり、同球団や徳島市周辺の子どもたちにとって待望の室内練習場を完成させたのだ。
独立リーグの球団だからこそできるアドバイス「未来の選択肢はいっぱいある」
県内初の民間による室内練習場となる同施設は、本格的な設備だけでなく、独立リーグならではの魅力もある。この施設で行われる野球教室では、所属する現役選手から直接指導を受けることができる。そこでは「今はこれが最先端の練習方法だからやりましょう、というスキル向上の一辺倒になるのではなく、(野球以外のことも含めた)考え方のヒントを与えてあげられる場になれば」と南氏。
独立リーグだからこそ、ヒントを幅広く示すことができる。「インディゴソックスには、中学、高校、大学と、いろんなところを卒業した選手が集まってくる。甲子園に出た選手もいれば、公立校出身もいますし、社会人を経験した選手、外国人、外国で生まれた選手がいることがあります」と、所属選手の経歴が多岐に渡ることに触れ、「いろんな話を聞くことは、子どもたちが将来、プロ野球選手になれなくても、他に夢がある子にとっても、無駄にはならないと思うんです」と語る。
さまざまな経験を積んできた独立リーガーと会話することで、「未来の選択肢っていっぱいあるよって知ってほしい、早い段階で」と願いを込める南氏。今年、創立20周年を迎える同球団の帽子をかぶって同施設を訪れる少年少女も珍しくない。のびのびと野球を楽しむ子どもたちの姿を、南氏は温かな目で見つめている。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)
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