12年で1000チーム激減…深刻な野球人口問題 “一極化”への危機感「歯止めかからない」

愛知県の学童チーム・守山ボーイズの練習の様子【写真:間淳】
愛知県の学童チーム・守山ボーイズの練習の様子【写真:間淳】

東海4県のチーム数は「1861→713」…守山ボーイズ会長「楽しさ伝える」取り組み

 自分たちのチームだけを考える時代は、すでに過ぎ去っている。全国大会に7度出場している愛知の学童野球チーム・守山ボーイズの山本次雄会長は、愛知を中心とした東海4県のチームが所属する「JBLA(ジュニアベースボールリーグ愛知)」の事務局長も務めている。野球の競技人口減少は深刻で、地元の中日ドラゴンズと連携して未経験者向けの野球教室を開催するなど、裾野を広げようとしている。

 5年生のチームを指揮しながら、守山ボーイズ全体を見ている山本会長は、学童野球の指導歴が40年を超える。チームは2022年に7度目の全国大会出場を果たし、2011年には準優勝。指導者として実績を残している山本会長の目は、自身のチーム以外にも向いている。学童野球の現状に強い危機感を抱いているためだ。

「愛知県も含めて東海地域の学童野球チームの減少に歯止めがかかりません。最近は合同チームも増えてきています」

 山本会長が事務局長を務めるJBLAには、愛知県を中心に東海4県の学童野球チームが所属している。2022年度の所属チーム数は713。ピークだった2010年度の1861チームから6割以上も減少している。

 守山ボーイズの選手数は極端に減っていない。ただ、かつては名古屋市の守山区からだけだった選手は今、名古屋市外や愛知県外からも集まっている。山本会長は「チーム数が減ると一極化が進んできます。私たちのチームには選手が集まっていますが、学童野球全体で考えるとチーム数や選手数の減少は大きな問題です」と語る。

 チーム数や競技人口の減少を軽減しようと、山本会長は行動を起こしている。中日に協力を呼びかけ、10年前にキッズ野球教室を始めた。当時一般的だった野球教室とは違い、野球未経験の小学校低学年や園児を対象にボールで遊ぶ楽しさを伝える内容。野球に興味を持つきっかけをつくると同時に、野球に対するマイナスイメージを払拭しようとしている。

方針の最優先に「野球の楽しさを教えること」を掲げる守山ボーイズ【写真:チーム提供】
方針の最優先に「野球の楽しさを教えること」を掲げる守山ボーイズ【写真:チーム提供】

「選手叱ることは百害あって一利なし」…楽しさと強さ両立

 学童野球のイメージで今も根強く残っているのは、怒声・罵声や行き過ぎた勝利至上主義。全国大会に出場するチームであれば、その傾向は強いと思われがちだ。だが、守山ボーイズはチーム方針の最優先事項に「野球の楽しさを教えること」を掲げる。山本会長は叱る指導を禁じている。

「選手を叱ることは百害あって一利なし。厳しく叱っても良いケースは、プロや五輪といった覚悟が必要な目標を決めた選手だけで、小学生には該当しません」

 山本会長は指導者になったばかりの頃、選手を叱った時期があったという。だが、叱っても成長につながらないと気付いた。選手がエラーするのは指導者の力不足。叱られた選手は積極性を失う。守山ボーイズは選手が自発的・積極的に動くチームを目指している。選手は指導者の顔色を伺うことなくハツラツとプレーし、自分の考えを指導者に遠慮なく伝えている。

 指導者が選手を叱る基準は1つだけ。それは、選手が逃げに回った時。接戦の場面で「自分のところに打球が飛んでくるな」と思う選手は、文字通り体が動かなくなって固まってしまう。山本会長は「逃げて得られるものはありません」と説く。

 全国大会に出場する強豪チームが楽しく積極的に野球している姿は、他のチームに好影響をもたらす。守山ボーイズが考えているのは学童野球界全体の未来。プロと連携した普及活動を含め、勝つだけではない野球の楽しさを伝えている。

(間淳 / Jun Aida)

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