自主性の時代でも「大人がどんどん伝えるべき」 全国2冠チームの“垣根なき”情報共有

関メディベースボール学院の井戸伸年総監督【写真:喜岡桜】
関メディベースボール学院の井戸伸年総監督【写真:喜岡桜】

2リーグで全国制覇…関メディベースボール学院総監督が語る強いチームづくり

 勝てるチームをつくるにはどうすれば良いのか。多くの指導者が直面する悩みに名将が答えた。昨年、ヤングとポニー、2つのリーグで全国制覇を果たした兵庫県の中学硬式チーム「関メディベースボール学院」(以下、関メディ)の井戸伸年監総監督が1月31日、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のイベントに出演。チーム力を上げる選手との接し方や、指導者の役割を明かした。

 関メディは昨年、ヤングとポニーで全国2冠の偉業を成し遂げた。チームを率いる井戸総監督は「TURNING POINT」のイベント「全国V監督3名が生回答 オンライン指導相談会」で、参加者から強いチームをつくる方法を問われ、こう回答した。

「選手を生かすチームづくりを意識しています。指導者が選手の特徴を知るだけではなく、選手も自分の特徴を知ることが大切です。選手との面談でも、セルフマネジメントの重要性を伝えています」

 チームを強くする手段や要因は1つではない。技術力の向上や野球の知識は不可欠になる。その上で、井戸総監督は個々の選手が生きるチームづくりを大切にしている。

 スタメンで試合に出ている選手以外の役割も重要視し「ベンチ入りに25人の枠があるなら、指導者も選手も25ピースで1つの絵を完成させるイメージを持ちます。怪我をした選手や調子の悪い選手が出た時を想定して、それぞれの役割を考えます。ベンチスタートでも大事な役割があります」と話す。

 選手を生かすにはプレーの特徴を把握することはもちろん、性格やコンディションを見極める必要がある。関メディでは指導者同士が日ごろから積極的に話をして、各コーチやトレーナーの意見、選手の状態などを記した日報をグループLINEで共有している。井戸総監督は「指導者間の会話はすごく多いです。それぞれ専門が違うので学びもありますし、指導者の成長が選手の成長につながると思っています」と語った。

選手の性格や状態を知るための“笑い”「自分の失敗談も話す」

 選手との距離感も大切にしている。専門知識を持つ指導者が、技術や練習方法を惜しみなく伝える。選手の自主性という言葉が最近は広がっているが、井戸総監督は「選手は中学生なので、大人が伝えるべきことはどんどん伝えていくべきだと思います」と話す。指導者は選手が理想とする姿を共有し、練習の目的を伝えながら二人三脚で目標を目指していく。

 選手の性格やコンディションを知るために大切にしているのは「笑い」。指導者が明るい雰囲気をつくり、選手が何でも気軽に話せる関係を築く。

 井戸総監督は「自分の失敗談を話すことは多いですね。中学生は想像していないようなミスをしますが、それを大人が楽しむこと。選手は一発芸をしますし、チームとして常に笑いを求めています」と笑う。全国制覇は偶然、成し遂げられるものではない。強いチームには理念や理由がある。

(間淳 / Jun Aida)

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