実力劣る子ずっとベンチは「親が見てられない」 初心者も実戦積める“強制ルール”

多賀少年野球クラブの辻正人監督【写真:喜岡桜】
多賀少年野球クラブの辻正人監督【写真:喜岡桜】

多賀少年野球クラブ・辻正人監督提言…成功体験高める初心者指導のコツ

「投げる」「捕る」「打つ」を指導する順番は? 経験の浅い選手を試合に出した方が良い? 野球初心者への教え方に関する悩みを、少年野球の名監督が解決した。滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督が1月31日、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のオンラインイベントに出演。野球初心者が練習試合に出場する際は「強制チェンジ」のルール導入を勧めた。

 全国制覇3度を誇る多賀少年野球クラブは現在、所属選手が園児から小学6年生まで130人を超えている。チームを指揮する辻監督が近年、力を入れているのが園児の指導。主に口コミによって、チームに園児が増えてきている。この時期に野球を楽しみながら基本の動きを身に付けることで、小学校高学年、さらには中学、高校へと進んだ時にパフォーマンスが伸びると考えている。

 園児や野球初心者の小学校低学年の指導は、将来の基礎をつくる大切な役割がある。一方、経験や理解力が乏しい子どもに野球を教えるのは難しい。辻監督は「TURNING POINT」のイベント「全国V監督3名が生回答 オンライン指導相談会」で、参加した少年野球の指導者から「投げると捕るは、どちらを先に教えるべきか」を問われた。

「投げると捕るは同時にスタートして、打つのは最後です。捕る動きを先に進めて、子どもたちに成功体験を与える方が良いと思います。投げる動きは、そこそこ形にはめる必要があるので、成功体験を得るのが難しいです」

 捕り方の習得では、体から少しグラブを離して選手に構えさせる。指導者は選手が構えているグラブを目がけて下からボールをトスする。選手にボールへの恐怖心を感じさせず、グラブを動かさなくてもキャッチできるようにして成功体験を与えるところからスタートする。

 投げ方は遊びの要素を取り入れる。辻監督が勧めるのはバケツとドッジボールを使ったメニュー。ひっくり返したバケツの上にドッジボールを置く。そのドッジボールを目がけて、選手はボールを投げる。ドッジボールがバケツから落ちると、選手たちは大喜びするという。辻監督は「いきなり投げる動作に入ってしまうと子どもは苦痛に感じます。段々と形に入っていくようにしています」と語った。

初心者も全員練習試合に起用…強制チェンジのルール採用

 オンラインイベントに参加した別の指導者からは、野球経験の浅い選手の起用法について質問を受けた。レギュラーと控えの力の差が大きく、控え選手のモチベーションを考えて試合に出したい気持ちがある一方、試合に出場させるレベルではないため悩んでいるという。辻監督は「強制チェンジ」のルールを提案した。

「多賀少年野球クラブでは、野球を始めて間もない子どもでも必ず試合に出しています。練習試合の相手に『すみません、育成中のチームでなかなかアウトを取れないので、2点入ったら強制的に攻守交替してください』とお願いします。どちらかのチームが1イニングで2点取ったら強制的にチェンジするわけです」

 強制チェンジにすると、アウトを取れなかった投手やチームは傷つかず、次の攻撃に気持ち良く入れるという。辻監督は「練習試合は相手チームのグラウンドへ行く場合もあります。保護者は長距離移動したのに、自分の子どもがずっとベンチにいる姿を見ていられないと思います。全ての選手が試合に出られるように強制チェンジのルールを使ってほしいです」と勧めた。

(間淳 / Jun Aida)

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